「クレムリンの子どもたち」、親が非難する西側で優雅な生活
(CNN) プライベートジェットで移動し、パリの高級住宅に住む。オーストリアのスキーリゾートで休暇を楽しみ、大学はロンドンやニューヨークのエリート校に通う。
親は欧州各国首都の超富裕層向けエリアに最上級の不動産物件を所有。本人たちのソーシャルメディアのプロフィルは、ブランド物の洋服と華やかなイベントであふれかえっている。
これが「クレムリンの子どもたち」だ。
彼らの親たちは西側諸国を公然と非難しているが、その子どもである彼ら自身はまさにそうした国々で育っている。
「どう考えても偽善の極みだ」。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校でロシア政治を専攻するダニエル・トリースマン氏はそう指摘する。
同氏によれば「彼らは矛盾だとすら思わないのかもしれない」。米ロ間に競争があるのは認めるが、それによって自分たちの娘の教育計画が影響を受けたり大邸宅を建てる場所が左右されたりする道理はないと、これらの人々は考えている可能性があるという。
ロシアのプーチン大統領は先月の演説で、「精神的に」西側と歩調を合わせかねない人々を非難。彼らは自分たちを「より高位の人種」と考え、「西側の集団」と1つの目標のために活動していると糾弾した。目標とはつまり「ロシアの破壊」だ。
「ロシア国民は常に、真の愛国者と取るに足らない裏切者とを見分けることができる。後者は偶然口に入ってきたブヨのように、吐き捨てるだけだ」(プーチン氏)
ぺスコフ大統領報道官/Alexander Zemlianichenko/AP
そんなロシアの腐敗と偽善を体現しているとみられる最高位の家族の一つが、ぺスコフ大統領報道官一家だ。
米国は最近、ぺスコフ氏本人とその妻、2人の成人した子どもに制裁を科した。その際、同氏一家の「贅沢(ぜいたく)な暮らしぶりはぺスコフ氏の公務員としての給与と釣り合わない。それはプーチン氏との関係で得た不正な富によって成り立つものである公算が大きい」と指摘している。
ぺスコフ氏の子どものうち、少なくとも2人は成長期の大半を西欧で過ごし、成人してからモスクワに帰ってきた。
報道によればぺスコフ氏が2020年に役職で得た収入は17万3000ドル(約2180万円)だった。しかし収監中のロシア野党指導者、アレクセイ・ナバリヌイ氏が立ち上げた団体「反汚職財団」が調べたところ、ぺスコフ氏は60万ドルのブランド物の腕時計を身に着けているのが確認されている。また新婚旅行でサルデーニャ島に行き、1週間借りるのに43万ドルかかる豪華ヨットを利用したのも分かっている。
資産記録、ソーシャルメディアの投稿、交通違反のデータをもとに、反汚職財団はぺスコフ氏の妻や元妻、子どもたちが高級車と高額の住宅を世界中に所有していることも突き止めた。国内で2000万人近くが貧困生活を強いられているロシアの状況とは極めて対照的だ。
ぺスコフ氏の2度目の結婚で生まれた娘のエリザベータ・ペスコワ氏(24)は、自分たちへの制裁を「全く不当で根拠がない」と非難。ビジネスインサイダー誌の取材に対し、旅行を制限されるのが「腹立たしい」と語った。
このほかテレグラムに声明を発表し、ロシア人であるのを誇りに思うとしたうえで、反ロシア感情が高まる中での制裁が公正な措置であるとはとても言えないと訴えた。