ロシアが報復を警告、フィンランド首脳のNATO加盟支持表明を受け
(CNN) フィンランドの首脳らが北大西洋条約機構(NATO)への自国の加盟を支持すると表明したことを受け、ロシア政府はこうした動きが自国の脅威となると述べ、報復の可能性を警告した。
フィンランド政府は最近議会に提出した国防関連の報告書で、NATO加盟は同国の選択肢の一つと記述しており、首脳らからの発表は予想されていた。
同国のニーニスト大統領とマリン首相は12日、「NATO加盟はフィンランドの安全保障を強化する。NATOの一員として、フィンランドは同盟全体を強化するだろう。フィンランドは遅滞なく加盟を申請する必要がある。この決定に必要な国の手続きが今後数日以内に迅速に取られることを望む」との共同声明を出した。
加盟にはフィンランド議会の承認や国内法上のハードルをクリアする必要がある。
ロシア外務省は同日遅く、フィンランド政府の声明は「同国の外交政策の急激な変化」を示すものであり、「このような動きの責任と結果に気づく必要がある」と対抗措置をとる構えを見せた。
NATO加盟が実現すれば、北欧地域の安定と安全保障の要となってきた両国関係に大きな亀裂が入ることになる。
ロシア外務省は同国が「国家安全保障上の脅威を防ぐため、軍事技術的なものやそれ以外の性質の報復措置に迫られるだろう」と述べた。
ロシア大統領府のペスコフ報道官も同日、フィンランドのNATO加盟は安全保障の強化につながらないと発言。ロシア側の対応は「この拡大が伴うもの、軍事インフラがどの程度国境に近づくかによる」と述べた。
ペスコフ氏は状況分析を進め、自国の安全保障に必要な措置を計画すると言及。「誰もがロシアとNATOの直接の衝突を避けたい。ロシア、NATO、そして最も重要なのは米国政府もだ」と述べつつ、ウクライナでの「特別軍事作戦」に関与する者には「最も決定的な対応」をとる用意があると語った。
フィンランドではNATO加盟への支持率が約3割だったが、2月のロシアによるウクライナ侵攻以降は8割近くにまで高まった。
NATOのストルテンベルグ事務総長はフィンランドから加盟の申請があれば「温かく迎え入れられる」だろうと発言。「これはフィンランドの主権上の決定であり、NATOはこれを完全に尊重する」「加盟プロセスはスムーズで迅速なもとのなるだろう」とも述べ、「フィンランドはNATOの最も密接なパートナー国の一つで、成熟した民主主義国家、欧州連合(EU)加盟国、欧州・大西洋の安全保障への重要な貢献者だ」と指摘した。加盟によりNATO、フィンランド双方の安全保障が強化されるとも語った。
フィンランドの西の隣国スウェーデンも近く、NATO加盟に関する意思表明を行う。
欧州の外交官や安全保障関係者は、交渉が始まればフィンランドはすぐに加盟できるだろうとの見通しを示す。米国を含む西側同盟国と比肩する軍事ハードウェアを数十年間購入しており、加盟基準の多くを既に満たしているためだ。
フィンランドのNATO加盟は、ロシアとNATOの双方にとって実際上も象徴面でも大きな意義を持つ。
第2次世界大戦以降、フィンランドは軍事的な同盟を組まず、名目上中立を維持してきた。ロシアの挑発を避けるためで、これによりロシア側の安全保障上の懸念をなだめ、良好な貿易関係を保とうとしてきた。
だが、ウクライナ侵攻は従来の方針を変えるのに十分な影響を与え、ロシア側の反応にかかわらずNATOへの加盟が最良の選択肢として映るようになった。
欧州の防衛関係者はこの数カ月、正式加盟前のロシアの報復に備えるため、加盟申請中もNATOがフィンランドに一定の保証を与えるだろうとの予測を示している。
11日には英国のジョンソン首相がフィンランド、スウェーデンの各国との新たな安全保障協定を発表し、いずれかの国が攻撃を受けた場合に支援を行うと約束した。
フィンランドは歴史的に高い防衛予算を設定し、徴兵制を維持している。NATO関係者の多くは、フィンランドが加盟すればロシアによる侵略への対抗力が格段に高まるとの認識を示している。
ロシア政府はウクライナ侵攻以前、NATOの境界を1990年代のものに後退させたいとの希望を示していた。だが、同国と約1300キロの国境を共有するフィンランドが加盟すれば、プーチン・ロシア大統領の打った一手でより強力になったNATOが一層ロシアに近づく結果が現実のものとなる。