父子3人で前線に、ウクライナのために戦う家族
前日には攻撃で自宅が破壊され、隣人が死亡したばかりだという。
だが、アナトリーさんは生まれた時から暮らす村を自転車で走りながら、いま村を離れる理由はないと語った。
前線からさらに離れた別の村では、タティアナ・ボズコという名の女性がCNNに対し、ロシア兵が村に来てウクライナ軍に撃退された時のことを語った。
ロシア兵は村の学校に勤務していた親ウクライナ派の夫を拉致。ボズコさんはCNNに、ロシアを支持する一部の隣人が侵略者に夫のことを告げたのだと思うと語った。
「シルゲイはとても優しく明るい人だった」とボズコさん。どんな集まりでも中心的な存在で、「彼を嫌っていたのはロシアの支持者だけだ」と語る。
夫は自宅から拉致され、アナトリーさんは二度と姿を目にすることはなかった。
夫の遺体は数日後、マットレスに覆われ溝に遺棄された状態で見つかった。激しく損傷した手が突き出ているのを村民が発見した。これ以外にもあざや、切り傷とみられる拷問の痕が見つかった。
「彼はさんざん殴られていた。本当に怖かった」。ボズコさんは静かに泣きながらそう語り、「まだ生きている時に撃たれたようで、複数の穴が空いていた」と振り返った。
ボズコさんは60代の元教師。いまは夫の恐ろしい最期の瞬間を想像しながら暮らす日々だ。慰めを与えてくれるのは息子と介護中の母親、ウクライナ軍の3つだという。
CNNに家族の話をしていたボズコさんはいったん中断し、遠くで響く砲撃音に耳を傾けた。迫撃砲が発射されていた。
ボズコさんはいまでは、飛来する砲弾と敵に向かっていく砲弾の違いが分かるようになった。今回はウクライナ側からロシア軍に向けて発射されていると話し、笑顔で「あの音を聞くとうれしくなる」と語った。