海上民兵
軍事立案者が警戒するべき民間船舶は、輸送船だけではない。
中国は領海問題における思惑を実行するために、商用漁船とみられる100隻以上の船を集めて海上民兵を設立したことでも専門家から非難されている。
戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、海上民兵を構成する船は少なくとも122隻、最大で174隻に上るとみられる。中国政府は海上民兵について存在すら否定している。
だが実際の数字はさらに大きい可能性もある。21年初頭、南シナ海のウィットサン礁周辺に200隻の中国漁船が集結した際、様々な専門家が海上民兵の関与を疑った。中国とフィリピンはいずれもこの海域の主権を主張しているが、フィリピンは中国船の存在を「明らかな挑発行為」と称した。
「人民軍の海上民兵は漁業などしない」とシュスター氏も昨年CNNに語った。「彼らは自動小銃を積載し、船体を強化している。至近距離では非常に危険な存在だ。そのうえ最高速度は18~22ノット前後と、世界の漁船の90%を振り切るほどのスピードだ」
CSISのアジア海洋透明性イニシアチブが昨年11月に公表した報告書によると、海上民兵は大きく2つのグループに分かれる。プロの民兵と、補助金制度を通じて中国軍に雇われた実際の漁船だ。
CSISの報告書によれば、プロの民兵は外国軍の軍事演習の邪魔をしたり、外国漁船を阻止したりといった活動を率先して行い、補助金を受けた漁師は数の上で圧力をかけているという。
世界最大規模の漁船数を抱える中国には、予備艦隊が大勢控えているというわけだ。
あらためて空母「福建」を考える
とはいえ、だからといって福建の進水が大事件でないというわけではない。
米国同様、空母はまもなくPLA海軍の要となるだろう。さらに近代中国軍の能力を象徴する存在にもなるとシュスター氏は言う。
「福建の進水は、直近の限定された影響よりも潜在能力で判断するべきだ。中国はすでに3隻の空母を進水し、そのうち2隻は完全に就役している状態だ。米海軍はその間、新しい艦艇1隻の就役に手こずっている」(シュスター氏)
ここでシュスター氏が言及しているのは、17年の就役以来トラブルに見舞われている米海軍の空母「ジェラルド・R・フォード」だ。すでにその時点で3年遅れだった。
この大型空母はいまだ配備されていないが、今秋には実現すると期待されている。
その間、中国は一歩先を進んでいる。
「彼らは米国や同盟国よりもずっと早いペースで海軍を増強している。不完全だが、基盤としては十分だ」(シュスター氏)