イタリア大統領、上下両院を解散 首相の辞任受け
ローマ(CNN) イタリアのマッタレッラ大統領は21日、ドラギ首相の辞任を受け、議会の上下両院を解散した。総選挙は9月25日に行われる。
マッタレッラ氏は大統領公邸からの演説で、ドラギ氏や閣僚に過去1年半の取り組みに対する感謝の言葉を述べた。
さらに「政治的状況が決まってこの決定につながった」と説明。これまでの議論や前日の上院での投票の様子から「政府に対する議会の支持が失われ、新たな多数派形成の見込みもないことが明白となった。こうした状況から両院の早期解散は不可避となった」と述べた。
上下両院議長との会談後に出した声明では、同国の現状は「立ち止まることを許さない」と言及。市民や企業に大きな影響を及ぼす物価高騰の影響など経済的、社会的危機を抑えるための介入に躊躇(ちゅうちょ)する暇はないと述べた。
ドラギ氏の辞任は、連立政権を組む「五つ星運動」、中道右派の「フォルツァ・イタリア」、極右の「同盟」が政権に対する信任投票を棄権したことを受けたもの。
ドラギ氏は国内で人気が高く、世界各国の首脳からも支持を得ていた。同氏はロシアのプーチン大統領や同国のウクライナ侵攻に対抗する欧州の重要な発言者と位置づけられていた。
政治的なパンドラの箱
ドラギ氏は2021年2月、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への対応を理由に辞任したコンテ前首相の後任として、過去8年間で5人目の首相として就任した。
元欧州中央銀行(ECB)総裁で、欧州債務危機で通貨ユーロを救った功績からファーストネームの「マリオ」にちなんだ「スーパーマリオ」のあだ名もつけられた。自身はどの政党にも属さず、閣僚は様々な党派から構成された。
最近はフランコ経済財務相と連携して、欧州新型コロナ復興基金から2090億ユーロ(約29兆円)の支援を受けるための改革案を準備していた。
だが先週、五つ星運動が生活費危機への経済対策で支持を撤回。さらに同盟とフォルツァが五つ星運動との連立解消の意向を示し、政権は崩壊の瀬戸際となっていた。ドラギ氏は以前、五つ星運動のいない政権を率いるつもりはないと言及していた。
議会が解散となった今、国民は改革案や23年度予算の成立、復興資金からの援助を総選挙まで待たなければならない。