ナイジェリア移民男性を白昼暴行、殺害 誰も止めに入らず イタリアで非難強まる
ローマ(CNN) イタリア東部マチェラータで、ナイジェリア国籍の男性が白昼、大勢の人の目の前で暴行され、殺害される事件があった。誰も止めに入らなかったことに対して非難の声が強まり、来月に選挙が迫る中、人種差別や移民に対する犯罪をめぐる論議が再燃している。
マチェラータ警察によると、殺害されたアリカ・オゴルチュクウさん(39)は、追いかけられて自分の松葉杖や素手で殴られ、死亡した。加害者はオゴルチュクウさんの携帯電話も奪った。
目撃者が撮影した映像では、「今すぐやめなさい」と叫ぶ女性や「死んでしまう」と叫ぶ男性の声が聞こえているが、誰も止めに入ろうとはしていなかった。映像はネット上で共有され、現地のメディアが放映した。
警察の7月31日の発表によると、事件は同月29日午後2時ごろ、マチェラータ県の沿岸部の町チビタノーバ・マルケの目抜き通りで発生。救急隊が現場でオゴルチュクウさんの死亡を確認した。
警察は8月1日、人種的な動機による殺人ではなかったとCNNに語った。警察の31日の発表では、「ささいな理由」だったようだとしていた。
警察は、イタリア人のフィリッポ・フェルラッツォ容疑者(32)を殺人と強盗の容疑で逮捕したことを明らかにした。弁護士によると、同容疑者は精神的問題を抱えており、精神鑑定書を提出する意向だという。
在ローマ・ナイジェリア大使館は事件について、「人通りの多い道路で、大勢の人の目の前で起きた。犯行の様子をビデオで撮影しながら、止めようとしなかった人たちもいた」と非難した。
大使館は当局の捜査に協力するとともに、被害者の遺族を支援するとしている。
オゴルチュクウさんの妻のチャリティー・オリアチさんは、夫のために公正を求めると訴えている。29日に記者団の取材に応じたオリアチさんは、この日の朝、クロワッサンを渡して「食べてね」と言ったのが、夫と話した最後になったと打ち明け、大勢の人が呼びに来てチビタノーバに駆け付けると、夫は道路に倒れていたと語った。
オリアチさんの弁護士によると、オゴルチュクウさんは9年ほど前にイタリアに来て、在留許可を更新しながら屋台で日用品などを売っていたという。
昨年、自転車に乗っていた時に車にはねられて足が不自由になり、松葉杖が必要になっていた。
弁護士によると、チビタノーバ・マルケの町長はオゴルチュクウさんの葬儀費用を町が負担すると発表し、妻と8歳の息子を支えるための募金活動が始まった。
イタリアでは来月の選挙に向けて右派勢力が支持を伸ばす中、今回の事件は国を揺るがしている。
マチェラータでは4年前にも、イタリア国旗をまとった男が人種的動機でアフリカ系移民6人を銃撃する事件が起きていた。