アレクサンドル・ドゥーギン氏とは何者か、過激なロシアナショナリズムの精神的支柱
11年には、当時首相だったプーチン氏が「ユーラシア連合」について言及し始めた。ドゥーギン氏は当時を振り返り、プーチン氏には「イデオロギー、(3期目の大統領として)再登板する理由」が必要だったと語っている。
ロシアが14年にウクライナ東部ドンバス地方の分離主義者を支援し始めると、ドゥーギン氏は「ユーラシア青年同盟」で存在感を発揮した。この組織は自称「ドネツク人民共和国」のために戦う軍隊経験者の採用を行った。
ドゥーギン氏はまた、ウェブサイト「ゲオポリティカ」を通じて大量のプロパガンダを流しつづけた。米国は同氏がサイトを管理していると主張。米財務省は今年、このサイトについて「欧米人などの視聴者に対してロシアの超国家主義者が偽情報やプロパガンダを拡散するプラットフォームの役割を果たしている」と指摘した。
敵には事欠かず
ロシア拡張主義の思想的支柱の1人であるドゥーギン氏は「2人の」プーチン氏がいると言及しており、「プーチン対プーチン」と題した書物を著したこともある。
ドゥーギン氏はその中で、プーチン氏には現実的で慎重な「月の」側面と、ユーラシア帝国の再興や欧米との衝突に注力する「太陽の」側面があると説明している。
ウクライナ侵攻から1カ月後の3月には、モスクワ紙とのインタビューで「『太陽』のプーチン氏が勝利を収めたこと、これが起こるべくして起こったことは間違いない。私は1年前どころか、何年も前からそう言ってきた」と指摘。「ロシアは一線を越えた。このことを私は個人的に非常にうれしく思っている」とも述べた。
ドゥーギン氏はロシア国内の敵には事欠かない。19年のインタビューでは「ロシアで権力の座にいる人間は全員カスだ。プーチン氏を除いて」と語っていた。
今年には、「ユーラシア主義」を強く信奉する姿勢は「地政学の基礎」を書いた頃と変わらないと説明。「中心となるのはロシア国民だ。ロシア国民と運命を共にすることに前向きな人に対しても開かれている」とも語った。
ドゥーギン氏にとってウクライナ紛争とは、停滞する欧米と、伝統やヒエラルキー、キリスト教正教会に基づく社会との間の存亡を賭けた戦いの一部に他ならない。
ドゥーギン氏の世界では、ロシアの運命は「全ての東スラブ人とユーラシアの兄弟を広大なひとつの空間にまとめ上げるまで完結しない。この運命の論理から全てが導き出される。ウクライナについても同様だ」という。