欧州議会巻き込む汚職疑惑、組織の実態知れば驚きはなし

（ＣＮＮ） 欧州連合（ＥＵ）が、過去数十年で最悪の部類に入るスキャンダルに揺れている。

ベルギー警察は先ごろ、強制捜索を行って４人を逮捕したと発表した。４人が関連しているとみられる現在捜査中の汚職事件では、中東カタールから欧州議会議員とそのスタッフに対して金品の贈与があったとされる。

捜査の標的となる「汚職」と「マネーロンダリング（資金洗浄）」の主体は組織化された集団で、「欧州議会の経済的、社会的決定に影響を及ぼす」ため、金品を贈与しているという。ベルギーの公共放送とＣＮＮの提携局ＲＴＢＦが検察を引用して報じた。

逮捕された４人のうち最大の実力者はギリシャ選出の欧州議会議員、エバ・カイリ氏だ。同氏は逮捕時、１４人いる欧州議会副議長の一人だったが、現在その地位は剝奪（はくだつ）されている。カタールとカイリ氏は、共にいかなる不法行為も否定している。

カイリ氏は１４日に予定されていた公判を欠席。再勾留され、２２日に出廷する予定だ。ベルギーの連邦検察が１４日に明らかにした。

同検察は欧州議会内で疑われる犯罪行為や汚職、マネーロンダリングに対する「大規模捜査」を展開していることを確認した。カイリ氏ほか３人は９日に逮捕された。

カイリ氏は欧州議会でカタールを擁護する発言を行い、サッカー・ワールドカップ（Ｗ杯）開幕を間近に控えるタイミングで同国を訪れてもいた。

人権侵害の疑いや出稼ぎ労働者の扱いを巡るカタールへの批判に対しては先月２１日、Ｗ杯開催を引き合いに出し、今や同国こそが労働者の権利に関して先導的な地位にあるとの見解を述べた。

ベルギー連邦警察は１４日、ツイッターの公式アカウントに捜査で押収した現金とされる画像を投稿した。金額は約１５０万ユーロ（約２億２０００万円）としている。

今回のスキャンダルはＥＵが拠点を置くブリュッセルを揺るがしているものの、ＥＵの組織、とりわけ欧州議会を知る人々にはさほど大きな驚きをもたらしていない。

「欧州議会は長年にわたり、罰を受けない文化を許容している」。反汚職団体トランスペアレンシー・インターナショナルＥＵの幹部、ニコラス・アイオッサ氏はそう指摘する。欧州議会議員らの手当の使い道は事実上全く監視されておらず、実際悪用されたケースを何度も確認しているという。

組織としての腐敗以外にも、これらの議員が欧州政治に影響を及ぼしたい人々の格好の標的になる要因はあると、アイオッサ氏はみている。議会は全体としては欧州の政策方針にとって多大な権限を持つものの、個々の議員はブリュッセル以外でほとんど注目されることがない。このため、監視を逃れやすい状況が生まれていると考えられる。

人権決議

前述のカイリ氏によるカタール支持の発言は、Ｗ杯を控える同国での人権を巡る決議について話し合う中で出たものだ。この決議は３日後に採択された。

ハンガリー選出の欧州議会議員、チェ・カタリン氏はＣＮＮの取材に答え、決議の文言に関する協議が非常に難航したと明かす。議会の主要な２会派に所属する議員らが、カタールに手厳しい内容で発表するのに抵抗したためだという。

今思えば決議に強い反発を示した同僚議員の姿勢は警戒すべきものであり、外部の権力が自分たちの協議に浸透していた可能性があることにも不快感を覚えると、同氏は語った。

当時具体的に何が起きていたのか、ロビー活動に関するルール違反があったのかどうか明らかになるのは恐らくまだ先の話だろう。改革が必要だとしても、その過程が痛みを伴う、困難なものになるのは間違いない。

しかし反汚職に長年取り組む活動家らにとって多少なりとも救いとなるのは、今回のスキャンダルがまさに絶好のタイミングで発覚し、メディアの注目を最大限に集めているという事実だ。通常そうした報道は、ブリュッセルの政局という特異な世界を避けて通るケースがあまりにも多い。

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本稿はＣＮＮのザヒド・マフムード、シャロン・ブライトバイテ両記者による分析記事です。