(CNN) 大きな戦争が「事故」によってさらに拡大することは多くはない。だが、ロシアがウクライナに仕掛けた失敗続きの残虐な侵攻では、当初から大幅な事態悪化の脅威がくすぶっていた。15日にポーランドで起きたロケットによる爆発は、この可能性をはっきりと示す形となった。
今回の爆発は、故意か否かを問わずロシアの行為ではなく、ロシアのミサイルに対するウクライナの迎撃行動が誤った方向に進んだ結果のようだ。だが、これはウクライナの防衛行為がもたらす身も凍るような「副作用」と言えるだろう。ウクライナには国民や民間インフラを狙うロシアのミサイルの雨から国を守る責務がある。
北大西洋条約機構(NATO)に加盟するポーランドは現時点で、防衛に関する協議を定める北大西洋条約第4条の発動を見送った。だが、この短いパニックの期間によって、NATOやNATOの役割の立ち位置はどのように変わっただろうか。NATOはロシアの侵攻に対するウクライナの防衛を支え、資金を提供する存在となっている。
ポーランドのドゥダ大統領が今回の件について、ウクライナの防空システムを原因とする「恐らく事故」と発言したことで、NATOが即座に対応する可能性は大きく減った。現地で見つかったがれきは、撃ち込まれたミサイルがウクライナ軍の運用するロシア製S300防空システムのものだと特定するのに役立ったのだろう。最終的に、この事案が事故だと判明したことで、全当事者にとって最も都合のいい結果になった。NATOにとっては、加盟国を誤って攻撃しないようなシステムの提供など、ウクライナの防空機能を容易に強化できる機会となる。
そして何よりも、これはロシアが人類史上最大の軍事同盟であるNATOとの全面戦争への拡大を望むという、ありえそうにない瞬間になりそうな事案だった。
ロシアはウクライナの小規模だがよく組織された軍隊に、さまざまな前線で敗退している。ロシア領だと違法に宣言した土地から自ら退却、受刑者や徴集兵を前線に送り込み、厳しいと予想される冬の到来前に旧式の雑な防衛態勢を築こうとしている。彼らはぞっとするような場所にいる。確かに、もしポーランドへの不意の攻撃があれば、重要都市ヘルソンからの退却を発端とするロシア軍撤退を巡る話から目をそらす効果はあるかもしれない。だが同時に、NATOによるロシア軍の一層の衰退をもたらす可能性が高い、破滅的で短絡的な動きになっていたことだろう。
しかし、我々は依然として危険のはらむ位置にいる。1940年代以降最大の欧州陸戦とNATOとの距離の近さは特筆すべきだ。多くの事象が誤った方向に進む可能性があり、物理法則を考えればいずれはそれが起きるだろう。