ポーランドは今回の件に防空強化で対応せざるを得ないだろう。ドイツも既にポーランドの領空警戒の支援を申し出た。抑止力とは強力な軍隊のことであり、ロシアも虚勢を張りつつ神経をとがらして注視している。もしこの熱い地域により多くの航空機、より多くの防空ミサイルが持ち込まれれば、より多くの事故が起きる可能性が高まる。ロシアが支援する分離主義勢力による民間機マレーシア航空17便の撃墜事件は誤って行われた行為のようだが、ミスだからといって人命の喪失が受け入れられるわけではなく、西側の対応が沈静化するものでもない。
ロシアもまた、戦略的に追い詰められている。それによって早まった行為に走るわけではないだろうが、事態の緩和に向けて動く公の余地は少なくなっている。謝罪をしたり、起きた過ちを認める発言をしたりする行為は難しくなる。
プーチン大統領は16日、自動車産業に関する協議で忙しかったが、ヘルソンからの撤退が必要な理由については公の説明をしなかった。だが、それは同氏がプレッシャーを受けていないということではない。この悲惨な戦争を選択したプーチン氏の行為に疑念を抱いている強硬派が存在する。もし、もう一度誤りや、誤りにつながる事案が起きれば、プーチン氏にNATOとの対立を避ける余地は国内事情から言ってほぼない。ロシアは国家として、この戦闘をNATO全体に対するロシアの戦いと位置付けてきた。既に戦いに入っていると宣言している戦闘から身を引くのは困難だ。
だからこそ、ポーランドでの爆発は、ゆっくりと進む戦争拡大の新たな兆候となっている。ゆっくりとだが、小さなこうした一連の動き――ウクライナの原子力発電所への脅威から始まり、ノルドストリームのパイプライン爆発、ポーランドの穀物工場を直撃し死者を出した爆発へと続く――は、不可能だと思われたことに対する感覚を侵食し、新たな一連の基準を作っていく。この戦争がいつ終わるのか。ウクライナを支援する国々はいつ終わりを望むのか。こうした一連の事態から、時計の針の音は一層大きくなっていく。
ロシアがこの悲惨な作戦を終えるまでに、同国が多大な苦痛と敗退、窮状を耐え忍ぶ意思があることは明白だ。それにより彼らの敗退や撤退の瞬間は遠い先へと追いやられるが、同時に、危険で暴力に満ちた場所に軍の装備が増え、より多くの過ちが起きうる期間も長期化することになる。
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本稿はCNNのニック・ペイトン・ウォルシュ記者の分析記事です。