激戦地バフムートの最前線、野戦病院の中で起きていること
(CNN) ウクライナ東部の都市バフムート近くの野戦病院でブザーが鳴り響く。患者が運び込まれて来る合図だ。
職員と医師たちが立ち上がる。凍える外の寒さを遮断していたドアが開いた次の瞬間、1台の車輪付き担架が突っ込んでくる。
担架には泥まみれの兵士が1人、横たわっている。ズボンの脚の片方をはぎ取る。
兵士はすぐにトリアージルームの中へ連れていかれた。痛みを訴える叫び声が、閉じたドアの向こうから聞こえてくる。
廊下では兵士の履いていたズボンをスタッフがずたずたにし、戦場で何があったかを調べる。
指の大きさくらいの金属片が出てきた。出血を止めていた止血帯も取り出される。
作業が終わるとずたずたになったズボンは黒いゴミ袋に入れられる。袋の中には他の負傷兵が身に着けていたものも入っている。
床の血にはすぐモップをかけるものの、さびたような悪臭は消えずに残る。
やがて、先ほどの兵士が別の担架に乗せられ、待ち構えた救急車へと運ばれていく。
「寒い、寒い」「俺の脚はどこだ?」と、兵士が口にする。
外では、青白い顔をした兵士らが軍用トラックの後部から一斉に降りてくる。動きは遅い。足を引きずっている者もいる。ドアから入って病院を埋め尽くす。
治療の順番を決める簡易なトリアージが行われる。負傷の内容がクリップボードに記されていく。兵士らは静かに結果を待ち、前線からさらに後方にある設備がより整った病院に移される。
兵士らの顔は暗く、疲れ切っている。傷ついた体を引きずり、外へ出てたばこを吸う。脳震盪(のうしんとう)を起こしている者もいれば、打撲傷を負っている者もいると、ワシールという名の兵士が語った。
「何度か脳震盪になった。壁にぶつかって肩を打撲した。肋骨(ろっこつ)や胸も痛む」。ワシールがここまで話したところで、別の救急車が到着。会話は打ち切られた。
すぐにこちらに運ばれてきた複数の患者には、聖職者が一緒についている。手足により重い傷を負っており、廊下で祈りが捧げられる。
昼も夜もこの繰り返しだ。死傷者がひっきりなしに運ばれ、医師が治療に当たる。
「武器が欲しい。今必要だ。来月ではない。今なんだ」と、搬送を担当する1人が短い休憩の間に訴えた。
血まみれの担架、捨てられた医療用手袋、そしてアルミ製の「スペースブランケット」が、病院外の地面に散らばっている。
ここには紛れもない戦争の現実がある。死傷者が出るのは避けられないことだと、つくづく思い知らされる。