裁判傍聴席で幼児に母乳与え退去命令、判事に強い批判 豪州
(CNN) オーストラリア南部ビクトリア州メルボルンの郡裁判所の判事が傍聴席で自分の赤ちゃんに母乳を与えていた母親に退去を命じ、強い批判を浴びる出来事がこのほどあった。
地元テレビ局によると、裁判官は「陪審の注意をそらす可能性がある」との理由を示していた。「一目瞭然のことだ」と自らの決定を弁護したが、退室を求めた際、陪審は席にいなかったという。
また、発言記録に基づき、「マダム、悪いのだが法廷で赤ちゃんに母乳を与えることは認められていない。退室をお願いしなければならない。少なくとも陪審の注意を散らすことになる。感謝する」と述べたとした。
毛布に包んだ幼児に授乳していた母親は地元紙の取材に、衝撃を受け、おとしめられたと思ったと述懐。法廷を立ち去った後、涙を流して泣いたとも振り返った。
豪州の母乳育児協会の関係者は「非常なショックを覚えた」とし、「この種のことがまだ起きることを聞いて大きな失望を感じている」と嘆いた。
別の地元テレビによると、同州政府の幼児期教育などの担当閣僚は、検察が同裁判所と話し合うと理解していると説明。「2023年にもなってあり得ないこと」との批判もにじませ、公共の場所での授乳を含めた子どもの世話に間違いは一切ないことを女性たちに認識してもらう必要がある」とも説いた。
豪連邦議会では2016年、女性議員が議場で幼児のお守りができるように規則を改定。翌年には連邦議会で母乳を与える女性議員が初めて出現していた。
母乳育児協会によると、自らの子どもに母乳を与える母親の権利は、連邦政府や豪州の全州や領土で法的に保護されている。1984年の連邦政府の性差別法では母乳の利用を原因とした直接的あるいは間接的な差別は違法行為となった。
ビクトリア州では母乳の授乳に関連する差別行為は、宿泊施設、クラブ、教育現場、就業場所やスポーツなどでは違法と定められている。ただ、法廷内については触れていない。