世界のプラスチック汚染、2040年までに80%削減可能 国連環境計画が道筋示す
さらに、新しいプラスチック製品の製造コスト抑制を支援する化石燃料補助金の廃止も提言し、こうした補助金がリサイクルや代替素材の使用を阻んでいるとした。化石燃料は、ほぼ全てのプラスチックの原料として使われている。
包装紙や小袋のような使い捨て製品に適切な代替素材を使用すれば(例えばコンポスト素材のような生分解性素材に切り替えるなど)、プラスチック汚染は17%削減できる可能性があると報告書は指摘する。
UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は声明の中で、「我々がプラスチックを生産、使用、廃棄する方法が生態系を汚染し、人の健康にリスクを生じさせ、気候を不安定化させている」と指摘。「UNEPの報告書は、プラスチックを生態系から締め出し、私たちの体や経済から締め出す循環型アプローチを通じ、そうしたリスクを激減させる道筋を示す」とした。
報告書で提言した変化のために必要とされる投資額は年間およそ650億ドル(約9兆円)と試算しているが、何もしなかった場合のコストはこれをはるかに上回ると分析。プラスチックが再利用され、リサイクルされる経済に移行すれば、プラスチックが気候や健康、大気、水などに与える悪影響を抑えることで、40年までに3兆2500億ドルを削減できる可能性があるとした。
報告書によると、プラスチックを80%削減すれば、地球温暖化の原因となる炭素汚染を年間5億トン削減でき、途上国を中心に70万人の雇用が創出される可能性がある。
ただしこうした転換が全て実現したとしても、40年までに約1億トンのプラスチックごみを処理する必要が生じる。この重量は輸送コンテナ約500万個分に相当し、端から端まで並べれば米ニューヨーク市からオーストラリアのシドニーまでを往復する距離になる。
この問題に対応するためには、リサイクルできないごみに対する基準を厳格化し、プラスチック製品の影響に関する製造者の責任を重くすることが求められる。
パリでは今月、世界初の国際プラスチック条約の制定を目指し、各国が2回目の交渉を予定している。同条約はプラスチックの製造から廃棄まで全ライフサイクルを網羅する内容で、プラスチック製造の抑制が盛り込まれるかどうかが焦点となる。