(CNN) 世界中で政治の古いルールが破壊されようとしている。
米国では、政治復帰の動きを強めるトランプ前大統領が政権1期目以上に民主主義や説明責任、礼節を軽視する姿勢を見せ、支持者が抱くビジネスや政治、メディアの「エリート」に対する軽蔑の感情を利用している。支持者は、自分たちを抑圧する明確な意図を持って築かれたシステムが、そうしたエリートによって維持されていると信じている。
ロシアのプーチン大統領はウクライナに侵攻することで、国際法や国家主権の概念を拒絶した。そして中国は、西側諸国が書き上げ、第2次世界大戦後に主流となった国際システムへの挑戦に成功しつつある。国際的な所有権や容赦ないビジネス慣行を守る能力を試す一方、「グローバルサウス」の発展途上国には権威主義的資本主義という代替的な政治・経済モデルを提示している。
この10年間にはもっと小さな反乱も起きた。英国の欧州連合(EU)からの離脱は、有権者が遠く離れたブリュッセルの機構から「支配を取り戻せる」と考えたことが原動力の一つとなった。フランスの大統領選で、極右指導者マリーヌ・ルペン氏が昨年示した力強さは、フランスの政治的コンセンサスを巡る将来の姿を予見させるものかもしれない。
米国が作り出したアンシャンレジーム(古い体制)が分解する中、バイデン大統領は米国の力を支えてきた構造の修理を政権の根幹に据えた。国内ではトランプ氏の猛攻から民主主義を守ろうとし、国外では前政権で破壊された同盟関係の強化に取り組んでいる。そこにはウクライナの生き残りを支える北大西洋条約機構(NATO)の再活性化も含まれる。
バイデン氏は1942年、米国が同盟国と今日まで続くことになる戦後秩序の形を考え始めた時期に生まれた。そして今、バイデン政権はほつれ始めているシステムと後に残す世界を前にして、バイデン氏世代が決定を行える最後のチャンスとなるのかもしれない。
今週日本で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)はウクライナでの戦争、中国の脅威、気候変動、国際貿易に集中するだろう。だが、協議の根底に横たわるテーマは国際秩序と慣行の強化に向けた取り組みだ。日本は1945年に米国の核兵器で灰じんに帰した広島で会議を開くことで、危機に瀕(ひん)している一つの国際的なコンセンサスを強調しようとしている。核兵器の拡散を阻止する必要性だ。
G7は世界の先進工業民主主義国の集まりで、米国、フランス、ドイツ、英国、カナダ、日本、イタリアから構成される。日本政府はオーストラリア、韓国、インド、インドネシア、ベトナムも招待した。皆経済的に成長している強国で、重要なアジア地域のプレーヤーだ。その意図は明確で、G7の秩序に基づく国際システムを拡大し実効性を保つこと、そして巨大な存在感で世界のビジネスと政治のやり方を変えようとする中国の動きに対抗することだ。最近では韓国、もしかしたらインドも将来完全なメンバーになるという話が出てきている。
新たなグレートゲームが進んでいて、それは今後数十年間の世界の秩序を決定しうる。そして、多くの西欧諸国が国内でポピュリストや反民主主義の運動を封じ込めようと苦労している状況は、世界での影響力を維持しようとするそうした国々の努力を一層困難なものにするだろう。
G7のような大きなサミットはつまらなく見えるかもしれない。だが、それは第2次大戦中に米英ソの首脳が集結し、その後80年にわたり世界を支配する国際秩序を書き上げた時と同じくらい重要な機会となる可能性を秘めている。
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本稿はCNNのスティーブン・コリンソン記者による分析記事です。