欧米で進むEV移行、不要になった「ガソリンがぶ飲み車」が向かう先
爆発的需要
中古の軽量車(乗用車など)の世界市場は2015年から19年にかけて約20%成長し、19年には480万台以上が輸出された。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まった20年に輸出がわずかに減少したが、輸出台数はかなり急速に増加している、と国連環境計画(UNEP)のロブ・デ・ヨング氏は言う。
UNEPのデータによると、米国は世界の中古車の約18%を輸出している。米国の中古車は、中東や中米など、全世界に輸出されているが、その多くはナイジェリア、ベナン、ガーナに輸送される。
中には事故車や水没車、単に古すぎる車などもあり、それらはパーツ用に競売にかけられる。また、米国の自動車ディーラーが手放そうとしている無傷の中古車もある。
ケニアやナイジェリアなどの主要なアフリカ諸国では、乗用車やトラックの9割以上が外国製の中古車だ。デ・ヨング氏の拠点であるケニアでは、車の保有台数が8年ごとに倍増しており、以前は全く車が走っていなかった通りが、今は車でいっぱいだという。
アフリカでは、これらの中古車に対する需要が極めて大きい。
「アフリカの人口は非常に若く、彼らは日々裕福になっている」と語るのは、車専門のオンラインマーケットプレイス、オートチェク・アフリカの最高経営責任者(CEO)、エトップ・イプケ氏だ。
「アフリカの若者は、物を買う余裕ができると、最初に欲しがるのは移動手段だ」とイプケ氏は言う。
しかし、アフリカでは米国のようにクレジットを利用できる購入希望者はほとんどいないため、新車には手が届かない人が多い。
イプケ氏は「それこそが、我々が販売する車の品質を上げられない根本的な理由だ」とし、さらに「人々が中古車に乗りたがっているわけではなく、単に価格の問題だ」と付け加えた。
欧米で電気自動車が普及すれば、アフリカ諸国への中古車の供給が増えるため、今後、中古車に対する需要はさらに急増する可能性がある、と専門家らは指摘する。
しかしUNEPのデ・ヨング氏は、より大気を汚染し、安全性も低い傾向にある経年劣化したガソリン車がアフリカに入ってくることに懸念を示す。
アフリカで車に対する需要が高まっている結果、アフリカに輸出される古い事故車の数が20年前よりも増えていることを示す証拠もある。
デ・ヨング氏は「現在、さまざまな種類の中古車が北の先進国から南の発展途上国に輸出されている」と述べ、さらに「台数が増えている一方、車の質は低下している」と付け加えた。
「環境に有害か、安全性を欠く」
UNEPによると、米国、欧州、日本からアフリカ、アジアに輸出される数百万台の車は、「環境を汚染するか、安全性を欠くか」のどちらかだという。
「それらの車は故障があったり、部品が欠損したりしていることが多く、有毒ガスを排出し、大気汚染を悪化させ、気候変動対策の取り組みを妨げている」とUNEPは指摘する。