再び攻撃受けたクリミア橋、プーチン氏にとっての重要性とは
キーウ(CNN) ロシアによって併合されたクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋が17日未明、2回の攻撃を受けた。ウクライナの治安当局者はCNNの取材に対し、ウクライナによる攻撃だと明かした。
クリミア橋はウクライナで続くロシアの戦争にとって不可欠な補給ルートで、ウクライナ南部、東部のロシア占領地域に人員や物資を輸送することを可能にしている。
「ケルチ橋」の名称でも知られ、ロシアのプーチン大統領にとって個人的な価値を持つ。クレムリン(ロシア大統領府)の説明では、橋はクリミアとロシア本土の「再統一」を示すものとされる。
プーチン氏がウクライナ全面侵攻を開始して以降、クリミア橋への攻撃は2度目。ウクライナはこれまで、現在進めている反転攻勢でクリミア半島を奪還したいとの考えを繰り返し表明している。
以下に知っておく必要のある点をまとめた。
なぜ橋がロシアにとって重要なのか?
ケルチ橋が戦略的に重要なのは、ロシアのクラスノダール地方とクリミア半島をつないでいるためだ。クリミア半島は2014年、ロシアによってウクライナから違法に併合された。
橋の象徴的な重要性も大きい。ロシアが欧州最長となる全長19キロの橋建設に投じた費用は約37億ドル(現在のレートで約5130億円)。ウクライナを占領して永久にロシアに結び付けようとするプーチン氏の目標を物理的な形で示すものだ。
開通の日、そこには勝ち誇った様子で橋を渡る車列を先導するプーチン氏の姿があった。ウクライナ人の間では、ロシアによる占領を思い起こさせるこの橋は極めて評判が悪い。
昨年10月には、燃料輸送車の爆発で道路部分が大きな被害を受け、橋は部分的に損壊した。ロシア大統領府はすぐさまウクライナを非難、プーチン氏はウクライナの治安機関による「破壊工作」だと主張した。ロシアは爆発後間もなく橋の修理を行った。
戦争においてロシアはどのような目的で橋を使っているのか?
橋は民間人向けの燃料や物資に加え、軍の日用品や補給品をクリミアに供給する上でも重要なルートになる。ロシア軍の車列はウクライナ侵攻を支援する目的で定期的に橋を利用し、車両や装甲車、燃料を輸送している。
ロシア軍による橋の利用に支障が出れば、ウクライナ南部の部隊への補給線は一段と脆弱(ぜいじゃく)性を増す。
ロシアはウクライナ南部ヘルソン州への物資輸送にクリミアの鉄道を使っており、これまでにクリミア、ヘルソンの複数の鉄道拠点がウクライナの長距離ロケット砲による攻撃を受けた。SNS上の動画やロシア当局者、ロシア国営メディアによると、クリミア橋を走る鉄道には遅れが出ているものの、17日も運行を継続している。
ウクライナの反転攻勢はクリミアの北に隣接するヘルソン州に入りつつある。ウクライナ軍の参謀総長は先週、ザポリージャ方面とヘルソン方面を始めとするウクライナ南部で、ロシア軍はウクライナ軍のさらなる前進を食い止めることに注力していると述べていた。
橋の状態は?
道路に並走する鉄道橋を通過する列車から今朝撮影されたとみられる動画からは、道路橋の一部に大きな被害が出ている様子がうかがえる。
クリミア共和国議会のコンスタンチノフ議長はSNSテレグラムの自身のチャンネルで「鉄道の線路に被害は出なかった」と説明した。
ロシアの著名な軍事ブロガー、ボリス・ロジン氏は17日午前、橋を渡れなくなった自動車についてはフェリーや他の大型上陸用舟艇で輸送すると述べ、修理にはやや時間がかかりそうだとの見通しを示した。
ロシア大統領府の発言は?
ロシア政府は17日、ウクライナの無人艇2隻が橋の攻撃に関与したと述べたものの、この主張を裏付ける証拠は示さなかった。
ロシア大統領府は公式捜査にも着手。ロシア連邦捜査委員会は今回の事案を「ウクライナの特殊機関によるテロ行為」と形容している。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は17日、記者団に対し、プーチン氏が今回の攻撃について報告を受けたと明らかにした。
ロシアのフスヌリン副首相は17日にクリミアを訪れ、現場の状況を視察する。
ウクライナの発言は?
ウクライナ保安局(SBU)の情報筋はCNNに対し、橋への攻撃はSBUとウクライナ海軍の合同作戦だったと明かした。
情報筋は公に発言する許可を得ておらず、匿名でCNNの取材に応じた。
ウクライナ国防省情報総局のユソフ報道官はこれより前、ウクライナ公共放送の取材に、クリミア橋の一部破壊でロシア軍の兵站(へいたん)に問題が生じる可能性を指摘。ロシア軍は橋を「ウクライナ領の奥深くまで戦力や資源を輸送するための主要兵站拠点として」使用しているとの見方を示した。
ユソフ氏は「当然ながら、兵站の問題が起きれば占領者の抱える問題は一層複雑になり、ウクライナの守備隊に有利に働く可能性がある」と指摘している。