プーチン氏がワグネルの新トップとして提案、トロシェフ氏について分かっていること
(CNN) ロシアのプーチン大統領がコメルサント紙に語ったところによると、プーチン氏は民間軍事会社ワグネルの戦闘員に対し、幹部の傭兵(ようへい)アンドレイ・トロシェフ氏をトップに据えることを提案した。
プーチン氏はワグネルによる先月の反乱が失敗に終わって以降、同社の幹部戦闘員とトップのエフゲニー・プリゴジン氏との間にくさびを打ち込んでいるように見える。少なくともコメルサント紙に対する発言からは、そのような構図が浮かび上がる。
コメルサントで報じられた会談は、ワグネルの反乱の崩壊から5日後、プーチン大統領によって開かれた。会談にはプリゴジン氏やワグネルの幹部戦闘員数十人が参加した。
コメルサントによると、プーチン氏は会談中、傭兵数十人に対して雇用の選択肢を複数提示した。その中に、「セドイ」(「白髪」の意味)のコールサインで知られる直属の指揮官の下で戦闘を継続する選択肢もあった。
プーチン氏は「彼らは全員ひとつの場所に集まり、引き続き軍務に就くことも可能だった」と発言。「彼らにとっては何も変わらない。これまでずっと本当の指揮官だった人物に率いられることになる」と指摘した。
コメルサントの記者から「それからどうなったのか?」と聞かれると、プーチン氏は「私がそう言うと、大勢が(肯定して)うなずいた」と答えたとされる。
アンドレイ・トロシェフ氏とは?
欧州連合(EU)とフランスが公開した制裁関係の文書によると、「セドイ」のコールサインを持つアンドレイ・トロシェフ氏はロシア軍の退役大佐で、ワグネルの創設メンバーにして執行役員でもある。
シリア情勢に絡むEUの制裁では、トロシェフ氏がシリアにおけるワグネルの作戦で参謀長の役割を務めたことが詳述されている。この作戦はシリア政権を支えるものだった。
2021年12月のEUの制裁によると、トロシェフ氏は1953年4月、旧ソ連のレニングラードに生まれた。
EUの制裁文書には「アンドレイ・トロシェフはシリアにおけるワグネルの軍事作戦に直接関与した。特にデリゾール地域で深く関与した」「こうした立場から、シリアのアサド政権の戦争遂行に欠かせない貢献を行い、シリア政権を支援するとともに、そこから利益を得ている」とある。
2022年6月の英国の制裁でも「アンドレイ・ニコラエビッチ・トロシェフはワグネル・グループの経営幹部の立場にあった。従ってシリア政権を支援し、民兵組織の一員として行動して、シリアの民間人を抑圧してきた」と指摘されている。
EUの制裁によると、トロシェフ氏に近い人物としては、ワグネル・グループの創設者で参謀本部情報総局(GRU)の元情報将校でもあるドミトリー・ウトキン氏がいるという。トロシェフ氏はアレクサンドル・セルゲービチ・クズネツォフ氏やアンドレイ・ボガトフ氏といったワグネルの指揮官ともつながりがある。
ロシアのインターネットメディア「フォンタンカ」によると、トロシェフ氏はロシア内務省の北西連邦管区を担当する特殊緊急部隊の要員だった。チェチェン戦争やアフガン戦争で従軍した経験も持つ。
アフガニスタンでの軍務が評価され、際立った貢献に与えられるソ連の勲章「赤星勲章」を二つ授与された。ロシアメディアによると、チェチェンでの作戦に対しても複数の勲章が授与された。
16年12月にはクレムリン(ロシア大統領府)でのレセプションに招かれた。この時のものと思われる写真が17年にロシアメディアに掲載されたが、これを見るとプーチン氏とトロシェフ、ウトキン両氏が並んで写っており、2人とも複数の勲章を身に着けている。
ウクライナは今年2月26日、トロシェフ氏に制裁を科した。
一方、プリゴジン氏の運命は分からないままだ。プリゴジン氏は反乱後、ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介した合意の一環でベラルーシに渡ったとの情報があるものの、ルカシェンコ氏は先週CNNに対し、プリゴジン氏はロシアにいると語った。
サンクトペテルブルクにあるプリゴジン氏の自宅を警察が家宅捜索する様子とされる映像も公開され、プリゴジン氏の状況に対する疑問の声が出ている。プリゴジン氏は6月2日以降、公の場に姿を見せていない。