ウクライナの戦場で負傷した将兵2人、帰属する国で命運分かれる
(CNN) ウクライナの戦場で、ウクライナ軍とロシア軍それぞれに所属する将兵2人が負傷した。負傷者に対する両軍の扱いの違いから、2人に訪れた結果は極めて対照的なものとなった。CNNの記者が取材した。
ウクライナ南部ザポリージャ州の戦線上空を飛行するドローン(無人機)の映像。緑の草地に、車両の轍(わだち)や砲弾によるものとみられる無数の穴が映っている。ドローンは轍の中に横たわる兵士1人を発見した。
この兵士はウクライナ軍に所属するセルヒーさんで自身の部隊とはぐれ、砲撃で胸と脚を負傷していた。ボディーカメラの映像で、傷口から出血しているのが確認できる。
後に病院で手当てを受けたセルヒーさんはCNNの取材に答え、横たわっていた地点から極めて近い位置にロシア軍がいるのを認識していたと振り返った。
ドローンを操縦していたウクライナ軍の兵士は飲料水や医薬品、メモを機体にくくりつけ、再度セルヒーさんのいる地点へ飛ばすと、その頭上からこれらの物を落とした。
しかし、この時のセルヒーさんには落とされたのが味方からの支援物資なのかロシア軍の爆弾なのかが分からず、どちらになるかは運次第だと思ったという。
この後のドローンの映像には、機体が自分を救うために飛んできたのだと気付くセルヒーさんの様子が映っている。セルヒーさんは地面に横たわったまま落とされた物資を確認し、上空のドローンのカメラに向けて親指を立てている。
映像の中で、セルヒーさんは水でのどを潤し、傷の応急処置をしている。やがて体力を取り戻し、自力で部隊に戻ることが出来た。
味方の兵士らは、セルヒーさんが肺に穴の開いた状態で2日間生き延びたと知り、非常に驚いていたという。
現在は病院で順調に回復しているセルヒーさん。記者に対し、今後の人生により大きな価値と目的を見いだしていると語った。
当該のドローンを操縦したユージーンさんは「自分たちにとってはどんな命も大切だ。良心に従えば、戦場で誰かを取り残すことなど出来ない」と語った。