未曽有の洪水で数百万人が孤立するバングラデシュ、「隣国インドが原因」と非難の声も
フェニ(CNN) 胸の高さまで達する泥水の中を何百人もの人々が安全な場所を目指してゆっくり進んでいく。持ち物は頭上に高く掲げ、濡れないようにしている。
バングラデシュ南東部のフェニ市に入ると、ここが、記憶にある限り同国最悪の洪水の一つの中心地と言われている理由が分かる。21日の夜以来、11の地区が水浸しになり、人口約150万人の都市の大部分が冠水しているのだ。
バングラデシュの人々は川や水路沿いに住み、洪水やサイクロンにも慣れている。科学者らによると、特に近年は人為的な気候変動により異常気象が悪化している。
それでも今回の洪水はバングラデシュの人々を驚かせた。そして、口々にインド当局を非難している。
CNNの取材班がインド国境からわずか数キロのフェニで会った数十人の人々は、インド政府が隣のトリプラ州にあるダムから警告なしに放水したと非難。「これはインドの水だ」と叫んだ。
インドはダムの放水が故意だったことを否定し、過度の雨量が要因だったと述べる一方で、停電と通信障害のため下流の近隣住民に通常の警告を発することができなかったことを認めた。
「彼らが生きているかどうかは分からない」
CNN取材班は、フェニで救援物資を供給し、弱い立場にある人々を救助するボランティア活動に参加した。
洪水地帯への出入りはボートのみ。主要道路はすべて車両通行止めで、市内の電力不足とほぼ完全な通信遮断により救助活動は遅れている。
陸軍と海軍が救援活動の調整に動員され、過去数日間で全国的なボランティア活動が活発化している。首都ダッカなどの地域からは人々が駆け付け、救助や救援物資の配布に協力している。
中には故郷に戻って家族を探す人もいる。
普段はダッカで英語教師として働いている男性はフェニ中心部から25キロ離れた郊外に12人の家族が取り残されていると語った。
男性は「彼らが生きているかどうかわからない」と語った。「私はずっと泣いている」。
また、「電気もガスもインターネットもない」と話し、国際社会に援助を求めた。
今回の洪水では約500万人が影響を受け、少なくとも18人が死亡しているが、水が引くにつれてその数ははるかに増える恐れがある。
インド当局によると、同国では少なくとも26人が死亡し、6万4000人以上がトリプラ州の救援キャンプに避難している。