未曽有の洪水で数百万人が孤立するバングラデシュ、「隣国インドが原因」と非難の声も

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救助隊に付き添われて高台へ避難する人々/Salman Saeed/CNN

救助隊に付き添われて高台へ避難する人々/Salman Saeed/CNN

普通の洪水ではない

バングラデシュの洪水被害者の間では、自宅を浸水させた水源に対する怒りが高まっている。

バングラデシュ暫定政府の報道官によると、インドの高等弁務官はダムの水位が高かったため「自動放水」が行われたと語った。

一方で、政治が一因となったと考える人もいる。

ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏が率いるバングラデシュ暫定政府の学生代表は「インドは警告なしにダムを開放し、非人道的行為を見せた」と述べた。

バングラデシュでは3週間前、長年首相を務めていたシェイク・ハシナ氏が追放された。公職の雇用割り当てに対する学生主導の抗議活動が全国的に広まり、ハシナ氏が弾圧を命じたことで数百人が死亡したためだ。

ハシナ氏は8月5日、ヘリでインドに逃亡した。同氏は15年間の在任中、インドと同国のモディ首相と強い絆を築いた。

ハシナ氏の追放後、同氏に忠実だとみられる人々に対する報復攻撃の臆測が浮上し、ヒンドゥー教徒が多数を占める隣国インドで大きな懸念を引き起こした。同氏に忠実だとみられる人々の多くはヒンドゥー教徒だからだ。

インド外務省は22日、声明で、洪水の原因をダムの放水に求めるのは「事実として正しくない」とし、洪水は「主に」ダム下流の河川の広大な集水域から流れ出る水が原因だと述べた。

「彼らはとても怖がっている」

外交上の対立が増す中、救助隊は洪水地帯での活動に24時間体制であたっている。そこでは、あらゆる救助活動が物流面で大きな課題となっている。

ダッカから洪水地域まで車なら通常4時間でたどり着けるが、今はその2倍かかっている。救助要員やボランティアが全国から向かっており、道が渋滞しているためだ。ボートはなかなか手に入らない。多くの家族が身内を救出するためにやって来るものの、たどり着く方法がない。

ダッカから家族を助けにやってきた男性が聞いたところによると、家族が住む村では35世帯が屋根にしがみついており、その中には妊婦2人も含まれている。しかし、市内からボートで3時間かかるその場所まで連れて行ってくれる救助ボートは見つからない。

男性は「彼らは水も食料もなく、とても怖がっている」と訴える。「この48時間、何の知らせも受け取っていない」

たとえボートを調達できたとしても、高台にある市内のいくつかの地域では何十人ものボランティアが人手で船を運ばなければならない。

フェニの主要幹線道路は今や主要水路となり、人々が陸にたどり着くための中心ルートとして使われている。

脱出できた人の中には、腰や胸の高さの泥水をかき分けて歩いた人もいる。安全な場所にたどり着こうと、水媒介性の疾患やヘビ、溺死(できし)といった危険をおかしている。

一方で、洪水が最も深刻な場所にいる多くの人々にとって歩くことは不可能であり、市の中心部から数キロ離れた村に取り残されている。これらの地域へはボートで向かうことさえ危険を伴う。密生した木々や沼地を進むことでエンジンが故障したり、濁った水で見えない水中の障害物にぶつかったりする危険があるからだ。

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