停戦発効でイスラエル北部に「異様」な平穏、ヒズボラの脅威は残る
イスラエル北部シュトゥラ/ナハリヤ(CNN) レバノンでイスラエルとイスラム教シーア派組織ヒズボラの停戦が発効したが、イスラエル北部では多くの住民が自宅帰還を拒んでいる。現地に残っている人からは、今回の停戦が恒久的な平和をもたらすとは考えにくいとの声が上がる。
イスラエル政府は26日、治安閣議で米国仲介の停戦案を承認。数千人の死者を出した1年以上の衝突に終止符を打った。
CNNは27日、停戦発効のわずか数時間後に国境の町シュトゥラを訪れた。前線に位置する町はレバノン国境からわずか数百メートルの位置にあり、約300人が住んでいたが、その多くは昨年の戦闘開始後に避難した。
停戦発効から数時間が経過したシュトゥラは依然ゴーストタウン状態で、一握りの住人が暮らしているだけだった。
CNNが町に入っている間、砲撃音に似た爆発音が付近で数回聞こえた。CNNは遠方で響く小火器の音も耳にした。
シュトゥラはヒズボラの対戦車ミサイルの脅威に何カ月もさらされており、イスラエル北部で最も危険な部類に入る。住民からは、停戦発効後も脅威が残ることを心配する声が漏れた。
シュトゥラの自宅に残っていたオラ・ハタンさんは、激しい砲撃が毎月続いた後に迎えた停戦の朝は「異様」だと語った。
「目を覚ますと静かな朝だった。この1年を経た後となっては、異様な感じがする」とハタンさん。「平穏そのもので、爆撃で目が覚めることも、シェルターへ走って避難することもない」と語る。
ただ、ハタンさんの恐怖は停戦合意後も和らいでいない。「この合意がどれだけ続くかは未知数」「誰にも分からない」と語る。
ただ、イスラエルがレバノン国内への軍事攻勢を強化して、レバノン南部に緩衝地帯を設置することを望んでいたと思われる他の住民とは異なり、ハタンさんはイスラエル政府に合意妥結以外の選択肢があったかどうか分からないと漏らした。
「他にどんな選択肢があるというのか。(レバノンの首都)ベイルートまで到達するのか」
60日間の停戦では、国連安保理決議1701の履行をめざす。この合意は20年近く前のもので、リタニ川以南に展開できる軍隊はレバノン軍と国連平和維持部隊のみだと定めている。
これは、イスラエル軍もヒズボラの戦闘員もレバノン南部で活動する許可が得られないことを意味する。決議が成立したのは2006年だが、イスラエル、ヒズボラ双方が相手の決議違反を繰り返し非難している状況だ。
26日の合意は世界の指導者から歓迎された。バイデン米大統領はヒズボラなどが合意を破った場合、イスラエルは「自衛の権利を保持する」との考えも改めて打ち出した。