イノシシ狩りに賞金、かつての保護動物が今や社会的脅威に 中国
「狩猟」は正しい解決策か?
イノシシによる襲撃の報告がソーシャルメディアや国営メディアで増え続ける中、中央政府は23年にイノシシを国家保護リストから外し、狩猟免許の必要性を免除した。
政策転換を歓迎する声も多かったが、地方当局による賞金稼ぎの取り組みには反発も招き、この増大する社会的脅威に国がどう対処すべきかについて、専門家の間では議論が巻き起こっている。
「我々は動物を保護するべきではないのか? なぜまた狩猟に戻ったのか?」と、中国版TikTokの「抖音(トウイン)」のユーザーは述べた。
10年以上にわたり野生動物の密猟と闘ってきた動物保護団体は、中国のSNS微博(ウェイボー)で全国的な駆除を「残忍な茶番劇」と呼んだ。
当局はこの政策を擁護している。国家林業・草原局のイノシシ個体群管理専門家チームの1人は、国営英字紙チャイナ・デイリーに対し、天敵がいない以上、狩猟はイノシシの個体数を管理する「唯一の方法」だと語った。
だが、北京拠点の自然保護団体「中国生物多様性保護・緑色発展基金会」の周晋峰代表はCNNに対し、人間の介入としての狩猟が正当化されるのは、動物の個体数が地域の生態系を圧倒している場合のみだと語った。
また、公開データに基づき、中国でイノシシが「猛威を振るっている」と断言するのは時期尚早だと指摘。イノシシの襲撃は「人間が自然のバランスを崩した結果だ」と付け加えた。
イノシシの駆除方法や死骸をどう処理するかについても意見が分かれている。
政府が支援する専門家グループのメンバーは、狩猟効率を上げるためにハンターが銃を使用することを認めるべきだと提案した。
また、法律を改正して「捕獲したイノシシ」を食用にすることを提案。だが、食用として安全であることを保証するための検疫プロセスを経た場合のみにとどめるとした。
どちらの提案も、グループ外の専門家の間で安全性への懸念を引き起こしている。
共産党機関紙の人民日報によると、国家林業・草原局は「プロの狩猟を促進する」ために「銃器と弾薬の管理を最適化する」ことに取り組んでいるという。
CNNは、銃器使用の可能性とイノシシの食用合法化の提案への対応について、当局に問い合わせた。
「イノシシによる被害は大惨事となっている。これは実際に生態環境の不均衡を反映している」と専門家グループの副代表は中国国営中央テレビ(CCTV)に語っている。「したがって、どんな方法を用いようとも、最終的には人間と自然の真の調和を実現するために、生態系の連鎖の流れとバランスを回復させる必要がある」