株主価値の最大化が「最も愚かな考え」である理由
一方、長期の株主や従業員など、後に残された人々はその後始末に追われるが、多くの大手企業には驚くべき回復力があり、社員たちは計画の失敗を乗り越え、業績向上に向け再び努力を始める。
しかし、頻繁に入れ替わるCEOたちが、株主価値の飽くなき追求のため、一見有望な計画を次々と実行し、一時的に株価を引き上げるも長期的には期待外れの破滅的な結果しか出せなければ、企業の回復力はすぐに損なわれる。
そしてこれが繰り返されれば、企業は簡単に死のスパイラルに陥る。社員たちは非情かつ懐疑的になり、質の高い従業員は会社を離れる。製品やサービスの質は低下し、顧客は不満を抱くようになる。
企業は、資源をイノベーションから株主への即座の見返りの提供に振り向ける。しかし、そんなことをすればライバル企業にすぐに追い付かれてしまう。そのうちアナリストたちは業績不振の匂いを嗅ぎ付け、その会社の株の売却を推奨し始める。その結果、会社の株価は下落し始め、さらなる改革や立て直しは火に油を注ぐだけに思える。そして最後に待っているのは倒産か買収だ。この過程で、多くの人々が損害を被る。