米ミネソタ州で水関連の起業相次ぐ 新たな産業集積地に
一方、アドバンスト・ウォーター・リカバリー(AWR)は、海水の淡水化に取り組んでいる。化学物質を使って脱塩化した後、独自技術を使いこの化学物質を除去する。ペンシルベニア州に試験プラントを建設中で、資源採掘の際の水圧破砕(フラッキング)に使用された水を浄化する予定。同社のビジネス開発担当責任者を務めるウィリアム・コール氏は、将来的に海水から飲み水を作り出すことを目標にしていると語った。
同氏はまた、AWRの技術を利用すれば海水の淡水化にかかるコストは従来の水準から70%削減できると試算する。現在、水不足に悩むカリフォルニア州の企業などから多数の問い合わせが寄せられているという。
セラミックスを使った浄水を進めているのは、ミネアポリス郊外に本拠を構えるナノストーン。人工的に作られた石であるセラミックスは、従来の浄水で使われてきたプラスチック製のフィルターよりも耐久性に優れている。ここでもやはり、産業施設で何度も繰り返し使えるように浄水することが目標だ。
セラミックスを使う発想自体は新しいものではないが、従来はプラスチックに比べ4~5倍の費用がかかった。同社では、ハチの巣状のデザインを採用することにより、セラミックスの持つ耐久性とプラスチックの持つコストの低さを同時に実現している。
ミネソタ州のミネアポリスからセントポールにまたがる地域に水テクノロジー企業が集まっている理由は定かではない。ミシシッピ川など水が豊かな地域性のほか、水を大量に使う農業が伝統的に盛んなことも背景として考えられる。
州政府の推計によると同州はこれまで、水テクノロジー関連で7億ドル(約860億円)以上に相当する技術を州外に提供。1万6000人近い雇用を創出した。ゼネラル・エレクトリック(GE)など、同州の水関連の大企業で働いていた元社員が起業しているほか、大学も数多くのプロジェクトの運営に携わっている。
地元の経済開発当局では水ビジネスを柱とした産業集積地を作る計画を模索。水関連の企業が地域に手数料を払う代わりに、規制対策やマーケティング面などで支援を受けられるような態勢作りを進めている。既にボストンやシリコンバレーのように関連企業が集積しつつあるという。