武漢のウイルス拡大、中国経済にとって最悪のタイミング
香港(CNN Business) 中国経済が落ち込み、国内が依然として米中貿易戦争に影響に苦しむなか、新型致死性ウイルスの感染拡大は最悪のタイミングで発生した。
コロナウイルスの感染は湖北省武漢市を中心に拡大。これまでに25人が死亡、830人の感染が確認された。中国市場には既に動揺が走っており、春節(旧正月)の休暇に向けた計画にも混乱が生じている。
政府が迅速な封じ込めに失敗した場合、さらなる打撃になりそうだ。消費のてこ入れを通じて深刻な景気低迷を避けようとしていた中国だが、感染拡大により、むしろ消費支出が鈍る可能性もある。
ロジウムグループの中国市場調査責任者、ローガン・ライト氏は「中国経済の立て直しを試みる担当者からすれば、今回の感染拡大は最悪のシナリオのひとつだ」と指摘する。
中国経済は昨年、債務増大や国内需要の冷え込み、米国の関税への対応に苦慮し、過去30年近くで最低水準の成長率にとどまった。米中間では最近、貿易戦争の「一時休戦」が成立したものの、関税の大半は維持されている。また、中国政府は失業への懸念も募らせており、ここ最近は大量人員削減を防ぐ目的で矢継ぎ早に景気刺激策を発表してきた。
INGのエコノミスト、ロバート・カーネル氏は、米国による数十億ドル規模の関税の大半は依然撤回されていないと説明。貿易摩擦の影響を相殺するため、中国政府は既に「可能なあらゆる政策手段」を講じてきたとも指摘した。
春節休暇を控える時期であることを踏まえると、感染拡大のタイミングは「特に不運」だとライト氏は指摘する。春節の時期には通常、数億人の中国人旅行客が満員の電車やバス、航空機で帰省する。
ウイルスの拡大を受け、中国当局は武漢を部分封鎖する異例の措置を講じた。武漢は1100万人が住む中部の都市で、今回のウイルスの発生源となった。また、規制当局は航空会社に対し、武漢行きの便の無料キャンセルを受け付けるよう指示。国営メディアによると、鉄道当局も同様の対応を取っている。
中国では2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行し、37カ国で8089人が感染、774人が死亡した。国家衛生当局の研究によると、世界経済の損失は400億ドル(現在のレートで約4兆3700億円)に上った。中国と香港の経済はもろに影響を受けたという。