エジプト当局、スエズ運河で座礁のコンテナ船を差し押さえ 980億円の賠償請求めぐり
(CNN) エジプト国営メディアのアル・アフラムは13日、エジプト当局がスエズ運河を先月1週間近くふさいでいた巨大コンテナ船を差し押さえたと伝えた。同船をめぐる賠償額については争いがある。
エジプトの裁判所は、パナマ船籍の「エバーギブン」によってスエズ運河の通航が妨げられ損失が発生したことを踏まえ、同船を所有する正栄汽船に9億ドル(約980億円)の賠償の支払いを命じた。
アル・アフラムによると、請求額の内訳にはメンテナンスの費用や復旧作業にかかった費用が含まれるという。
同船の離礁作業では24時間体制でサルベージ活動が行われた。燃料や貨物を運ぶ世界各地の船が運河に入れなくなり、日ごとに切迫感や世界の注目度が上昇。エバーギブンは3月29日に離礁に成功し、安全性の検査や修理のために付近の湖に移動した。
正栄汽船は、賠償請求については保険会社と弁護士が対応していると説明。これ以外のコメントは控えた。
船主責任保険(P&I保険)を提供するUKクラブは13日、スエズ運河庁(SCA)からの9億1600万ドルの請求に対応していると明らかにした上で、その根拠を疑問視。「大部分が裏付けのない多額の請求があるものの、船の所有者と保険組合はSCAと誠実に交渉している。4月12日には、和解に向けて慎重に検討した大きな提案がSCAに対して行われた」とした。
UKクラブは通航妨害やインフラの問題など、一部の第三者責任についてエバーギブンの保険を担っているものの、船そのものや貨物に関しては保険を提供していないという。
UKクラブは請求額が正当でないと考える理由について、「SCAは今回の膨大な請求額に関して詳しい根拠を示していない」と指摘。請求額には「サルベージボーナス」の3億ドルや、「評判失墜」に対する3億ドルも含まれると指摘したほか、座礁で汚染や負傷者は出なかったこと、スエズ運河が迅速に商業運用を再開したことなどにも言及した。
またSCAの請求には、船の所有者や船体の保険会社が受け取ると予想されるサルベージ会社のサルベージ費用の請求は含まれていないとも述べた。
SCAによると、エバーギブンの貨物は紛争解決まで差し押さえが続くという。