アジア経済、ウクライナ・中国・米利上げの「三重苦」 世銀が成長率予測を下方修正
香港(CNN Business) 世界銀行は5日、今年のアジア諸国について、経済に重大な衝撃を与える3つの事象に対処しなくてはならなくなる可能性があるとの見方を明らかにした。具体的にはウクライナでの戦争、中国経済の急激な落ち込み、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げだという。
世銀は東アジアおよび太平洋地域(EAP)の2022年の経済成長見通しをプラス5.4%から同5%に下方修正。状況によりさらなる減退が生じた場合、成長率の伸びは4%にとどまり、新たに600万人超が貧困化する恐れもあると警鐘を鳴らした。
中国の予測も引き下げ、今年は5%しか経済成長しないと推計した。実現すれば昨年の8.1%から大幅な減少となる。中国は公式の目標として5.5%の成長を掲げているが、世銀の予測はこれも下回った形だ。
米国による利上げを受け、新興国からは資本が流出し、自国通貨への圧力が高まる公算が大きい。これが「時期尚早の」金融引き締めを引き起こし、成長を阻害する可能性があると世銀は見ている。
一方、中国での新型コロナウイルス感染の再拡大とそれに対する厳しい封じ込め策、さらに国内の巨大な不動産部門が抱える問題は域内の輸出を落ち込ませるかもしれない。EAP諸国の貿易は中国市場志向を一段と強めつつあるからだ。
ただ地域に「最も具体的な」影響を及ぼすのは、ウクライナでの戦争で、それは日用品の供給が途絶えたり財政が圧迫されたりするといった形で表れる。
世銀によれば「戦争とそれに伴う経済制裁は食料や燃料の国際価格を押し上げ、消費者と経済成長に痛手をもたらす公算が大きい」。例えばフィリピンでの貧困層の数は、1年で穀物価格が10%上がった場合、110万人増える可能性があるという。