ドイツ銀行とUBSの株価下落 欧州銀行危機への懸念くすぶる
ロンドン(CNN) 24日の欧州株式市場で銀行株が急落した。相次ぐ銀行の経営危機がさらに拡大するのではないかとの懸念がくすぶっている。
欧州連合(EU)と英国の大手行42行の株価を追うストックス欧州600銀行指数は前日比3.8%安を記録し、先月後半に付けた高値からの下落幅は18%に達した。ロンドン市場のFTSE100指数も1.3%下げた。
ドイツの最大手行ドイツ銀行の株価は一時14.5%安となり、その後やや持ち直して終値は8.5%安となった。スイス大手行のUBS、クレディ・スイスの株価はそれぞれ3.6%、5.2%下げた。
S&Pマーケット・インテリジェンスによると、ドイツ銀行のデフォルト(債務不履行)に備えるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)5年物の保証料は23日に203ベーシスポイントと、2019年前半以来の水準に上昇。米東部時間の24日正午には208ベーシスポイントまで上がった。
ドイツのショルツ首相は24日、ドイツ銀行に関して「懸念すべき理由はなにもない」「非常に収益力のある銀行だ」と発言。EU各国の首脳も、欧州の銀行システムは「力強い資本と流動性があり強じんだ」との共同声明を発表した。
ドイツ銀行はコメントを控えた。
CMCマーケッツのマイケル・ヒューソン氏はドイツ銀行など欧州の銀行のCDS保証料上昇について、利上げが経済全体や銀行のバランスシートに与える影響への懸念によるものだと指摘する。
欧州中央銀行(ECB)は先週、銀行部門の混乱よりもインフレが経済にとって差し迫った脅威だとして0.5%の利上げを決めた。
英イングランド銀行(中央銀行)も23日、0.25%の利上げを発表。英国では先月のインフレ率が10.4%を記録していた。
ただ、投資プラットフォームを運営するハーグリーブス・ランズダウンのスザンナ・ストリーター氏は、市場の過敏さは現実とずれているとの見方を提示。「銀行不安が広がって以降、より多くの預金がドイツの貸し手に流れ込んでいるように見え、規制要件を十分上回る資本の準備があると考えられる」と語る。
一部のアナリストは、ドイツ銀行が24日発表した社債の早期償還に投資家が浮き足立ったとの見方を示す。早期償還は通常、財務状態の健全さを示すサインとみられるが、米銀2行の破たんやクレディ・スイス買収といった動きがある中で、ドイツ銀行が銀行業界の状態に神経をとがらせ過剰な補償を行ったと受け止められた可能性があるという。キャピタル・エコノミクスのジョナス・ゴルターマン氏はCNNに、ドイツ銀行の決定が「裏目に出たように見える」と語った。
事情に詳しい人物によれば、ドイツ銀行の今回の早期償還は以前から予定され、最近の市場の動きに対応したものではないという。ドイツ銀行は2月に発行した同じタイプの社債で早期償還の社債を置き換えたという。
ドイツのコメルツ銀行やフランスのソシエテ・ジェネラルの株価もそれぞれ5.5%安、5.9%安となった。