中国、巨額融資した22カ国に大型の救済支援

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北京にある中国人民銀行の建物/Stringer/Bloomberg/Getty Images

北京にある中国人民銀行の建物/Stringer/Bloomberg/Getty Images

香港(CNN) 過去10年間で、中国は莫大(ばくだい)な額の貸し付けをアジア、アフリカ、欧州の各国政府に行ってきた。各国のインフラの巨大プロジェクトに資金面で関わりながら世界的な影響力を高め、債権国としても世界最大の部類に名を連ねるようになった。

新たな調査が示すところによれば、今や中国政府は緊急時における主要な救出役をも担い、これらの同じ国々に融資している。そうした国々の多くは現在、債務の返済に苦慮している。

2008年から21年にかけ、中国は2400億ドルを拠出し、22カ国の救済に充てた。対象は「ほぼ例外なく」、習近平(シーチンピン)国家主席が提唱するインフラ構想「一帯一路」に絡んだ債務国。具体的にはアルゼンチン、パキスタン、ケニヤ、トルコなどだ。世界銀行や米ハーバード大学公共政策大学院などの研究者らが携わった28日発表の論文で明らかになった。

中国による緊急支援は、米国もしくは国際通貨基金(IMF)による拠出額に比べればまだ規模が小さい。米国とIMFは定期的に緊急融資を行い、危機に陥った国々を救済している。それでも中国はここへ来て、多くの発展途上国を救う主要なプレーヤーとなった。

国際的な危機管理者としての中国の台頭は、1980年代の債務危機の時期に中南米諸国をはじめとする高債務国に救済を申し出た米国を彷彿(ほうふつ)させると上記の論文は指摘。米国はこのほか、30年代と第2次大戦後にも融資大国として頭角を現していたという。

しかし、現在の中国との間には違いもある。

1つは、中国による融資の方が格段に目立たない形で行われるという点だ。そうした事業や商取引の大半は、公の目から隠される。これが反映するのは世界の金融システムが「一段と非制度化、非透明化する一方で、断片化には拍車がかかる」現状だと、論文は指摘する。

中国の中央銀行もまた、他国中銀との間の融資及び通貨スワップの合意に関するデータを公開しない。国有銀行も国有企業も、他国への貸し付けについての詳細な情報を発表することはない。

今回研究チームが依拠したのは、中国の銀行と合意した他国の年次報告書並びに財務諸表、ニュース報道、プレスリリース、当該国のデータセットをまとめたその他の文書だった。

論文の共著者を務めたブラッド・パークス氏は「中国による救済ローンの影響を見積もるには、格段に多くの調査が必要になる。とりわけ中国人民銀行が管轄する大規模なスワップ枠を調べなくてはならない」「中国政府は国境を越えた救済貸し付けのための世界的なシステムを新たに構築したが、その手法は不透明でまとまりがない」と指摘する。

論文は米ウィリアム・アンド・メアリー大学のグローバル・リサーチ・インスティテュートに所属する研究機関エイドデータが運営するブログに投稿された。

中国の融資

論文の報告によると2010年時点では、債務にあえぐ国々を支える国外からの融資のうち、中国が占める割合は5%に満たなかった。22年までにその比率は60%にまで跳ね上がっている。これは中国政府が救済事業を強化する一方、インフラ投資からは距離を置いている実態を反映するものだという。こうしたインフラ投資は、10年代初めの一帯一路を特徴付ける取り組みだった。

融資の大半は、16~21年の期間に集中している。

救済融資の総額2400億ドルのうち、1700億ドルには人民銀が他国の中銀との間で合意した通貨スワップ枠を活用。残る700億ドルは中国国有銀行のほか、石油・ガス会社を含む中国国有企業が貸し付けた。

中国との通貨スワップ枠を活用した国のほとんどは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって財政難が悪化していたことも、報告から明らかになった。

しかし、中国による救済は高くつく。人民銀が求める救済融資の利子は5%で、IMFの2%を上回ると論文は指摘する。

しかも融資拡大の対象となったのは、中国の銀行セクターにとってより重要と見なされた中所得国だった。低所得国への新規の融資はあっても微々たるもので、債務の再編が条件として提示された。

論文の共著者のカーメン・ラインハート氏はエイドデータへの投稿で、「中国政府は最終的に自国の銀行を救済しようとした。そのために国際的な救済貸し付けというリスキーな事業に足を踏み入れた」と述べた。

一帯一路構想

13年に習主席が初めて発表した一帯一路構想は、世界的な大国として急速に台頭する中国の影響力を一段と伸展させるものと見なされてきた。

米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)によると、21年3月の時点で同構想には139カ国が参加。国内総生産(GDP)の合計は世界全体の4割に上っていた。中国の投資額は1兆ドルに迫ると同国外務省は明らかにしている。

しかし資金不足と政治的な抵抗から特定のプロジェクトは頓挫(とんざ)。環境に絡む事案や汚職スキャンダル、労働に関する違反で損なわれたプロジェクトもある。

一部の国の世論では、債務超過や中国の影響力に対する懸念も噴出する。一帯一路は大がかりな「債務の罠(わな)」であり、現地のインフラを支配下に置くために策定されているとの非難は、構想の評判に傷をつけている。エコノミストらは概ねこうした非難に否定的な見解を示す。

CNNは中国人民銀にコメントを求めた。

今年1月、中国の秦剛(チンカン)外相は同国がアフリカで「債務の罠」を仕掛けているとの非難を一蹴。一帯一路の主要な投資先であるアフリカについては債務の軽減に尽力しているとし、そのための合意を多くの国々との間で結んでいると強調した。

秦氏は今月も一帯一路を擁護し、構想が「公共の利益」になると指摘。途上国での債務の悪化は米国による利上げに原因があると非難した。

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