通行車両の力も活用、「超軽量」の小型タービン登場 英
F1カーと同じ
2020年、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)で、トンプソン氏は機械技師のジョン・サンダーソン氏と自宅の裏庭でタービンの試作品を製作し、2人でアルファ311社を設立した。その後外部企業の助けを借りて改良すると、ビジネス向けSNSリンクトインの同氏のアカウントに画像を投稿した。
地元ニュースで報じられたのをきっかけに、O2アリーナからお声がかかった。「ニュースを目にした施設のマネジャーから『O2でも設置可能か?』と打診があった。ただ純粋にスタートアップ企業のサポートとして、実社会での検証の場を提供したがっていた」とトンプソン氏は語った。
3基のタービンがO2アリーナに設置されたが、22年に温帯低気圧「ユーニス」で施設が損傷を受け、1基が除去された。
素材はF1カーにも使われるカーボンファイバー製で、高さは5.9フィート(1.8メートル)、重さ88ポンド(40キログラム)。だが実際の回転部分の重量はわずか30ポンドあまり(13.6キログラム)だ。「超軽量の風力タービンを設計した」とトンプソン氏も言う。「そのため重量のあるガラスファイバーや金属製のタービンよりもずっと回転しやすくなっている。道路への設置には、すでに送電網と接続している街灯を活用している」
街灯の配線は、昨今のLED電球よりもエネルギーを必要とする従来の照明器具向けに設計されている。すなわち、タービンで発電した電力の処理に必要なインフラがすでに整っているとトンプソン氏は付け加えた。発電したエネルギーはそのまま街灯に給電できる上、余剰分を送電網に売電すれば、道路を管理または所有する地元当局の収入源にもなる。
タービンは自然の風も捕えることができるが、通行車両による空気の流れを活用するのが本来の目的だ。トンプソン氏によると、小型車が時速50マイル(約80キロメートル)でタービンの脇を通過すると、時速12マイル(約19キロメートル)の気流が発生する。タービンを回転させるには十分だ。高速道路に設置すれば、タービン1基で300ワットの太陽光パネル30枚分、ビルに設置すれば太陽光パネル14枚分の電力を発電できる。
トンプソン氏はこの1年、拡張性の高い商用版タービンの開発に取り組んでいる。「演算流体力学を使って、もっとも効率的なタービンに改良している」と同氏。「今は英国の大学と風洞実験を行うところで、それが終わったら販売を開始する予定だ」
すでに官民合わせて117カ国900以上の組織から打診があり、そのうち約70の案件はすでにタービンを設置済みだという。具体的にはスタジアム、工場、倉庫、橋、有料道路、ガソリンスタンドなどだ。
アルファ311社のタービンが設置される公共道路第1号となるのが、イングランドのバーミンガムに程近い単一自治市、テルフォード・アンド・リーキンだ。同社では24年上半期中に最大181基のタービン設置を見込んでおり、実現すれば域内2万本の街灯がカーボンニュートラル化するという。