スウェーデンの温暖化ガス排出量、「ノルドストリーム」のガス漏れで急増
(CNN) スウェーデン環境保護庁は14日、ロシアから欧州へ天然ガスを供給する海底パイプライン「ノルドストリーム」の昨年の破壊で生じたガス漏れにより、温暖化ガスの排出量が年間7%増加したと明らかにした。
環境保護庁の推計によると、ガス漏れの大部分はデンマークの経済水域内で発生したが、スウェーデン領内でも580万トンの気候汚染物質が流出した。
ノルドストリームの漏出がなければ、スウェーデンの温暖化ガス排出量は2021年の水準から5%減少していたとみられる。
今回の汚染の原因となったメタンは、ストーブの燃料や暖房に使われる化石燃料ガスの主成分で、短期的には二酸化炭素の80倍以上の温暖化効果がある。このガスは埋め立て地や家畜、石油・ガス産業から大気中に放出され、特にパイプラインからの漏出が大きな放出源となっている。
22年9月に発生した「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」の破壊は、欧州とロシアのエネルギー戦争の大きな火種となった。ウクライナ侵攻を進めるロシアは当時、ノルドストリーム1を通じた欧州へのガス供給をすべて停止しており、西側の制裁が技術的困難を引き起こしたと非難していた。
当局はこれまでのところ、破壊に関与した者を特定していない。
ガス漏れが起きた当時、国連環境計画(UNEP)は人工衛星で濃縮メタンの巨大な煙を検知していた。その後の発表では、ノルドストリームの破損はメタンの1回の放出量としては観測史上最大になった可能性が高いと報告した。
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで最近開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では、メタン排出量の削減が初期日程の大きな焦点となった。メタンは強烈な温暖化効果を持つことから、科学者の間では、世界気温上昇の道筋を変えるにはメタンの削減が最も簡単かつ迅速な方法だとの指摘が出ている。