寒さで縮むEVの航続距離、理由はドライバーにも?
(CNN) 全米が厳しい寒さに覆われる中、電気自動車(EV)の航続距離が短くなったと感じるドライバーも多いかもしれない。それには恐らく思い当たる以上の理由がある。
米消費者団体の「コンシューマー・リポート」が幹線道路でテストした結果、氷点下の気温でEVを走行させると、暖かい日に比べて航続距離が平均で約25%短くなることが分かった。
航続距離が短くなる原因は主に、バッテリーとドライバーにある。EVバッテリー調査会社リカレントのアンディ・ガーバーソン氏によると、人にとってもEVバッテリーにとっても、最適な気温はおよそカ氏60度台半ば~70度台半ば(セ氏約18~24度)の範囲とされる。
バッテリーは電子とイオンがバッテリー内で一方からもう一方へと動く際の化学反応によって作動する。気温が低くなると、バッテリー内も含めてあらゆる化学反応が鈍くなり、航続距離が短くなる。
寒くなると人間の機能も低下する。寒い日に運転する場合は暖房を入れる必要があり、実際にはバッテリーの温度が与える影響以上に、EVの航続距離に影響を及ぼしているという。
ガソリン車であれば、暖房を入れても燃費にはほとんど影響しない。ガソリンエンジンは夏であれ冬であれ、常時大量の熱を発生させる。車の運転のためガソリンを燃焼させる際は、車を動かすエネルギーよりも廃熱になるエネルギーの方が多く、その余分な熱を車内の暖房に利用できる。
これに対して電気モーターやバッテリーはほとんど廃熱が発生しない。それが効率性の一因でもあり、バッテリーのエネルギーはほとんど全てが走行のために使われる。しかし車内の暖房を入れると、走行のために使われるエネルギーがその分少なくなり、走行できる距離が大幅に短くなる。
コンシューマー・リポートのテストでは、短距離の走行を繰り返すと事態を一層悪化させることが分かった。いったん車が停止して車内の気温が下がると、再始動するたびに車内を暖め直す必要が生じ、エネルギー消費がさらに増えて失われる航続距離が倍増する。
幸いなことに新しいモデルのEVは、ほとんどが非常に効率的なヒートポンプ暖房システムを搭載して影響を最小限に抑えている。ただしそうしたシステムにも限界があり、気温がおよそセ氏氷点下10度を下回るとうまく作動しなくなるという。
気温が低いとEVの充電にも時間がかかる。充電は化学反応であり、気温が下がると鈍化する。実際のところ一部のEVは、極端な寒さの中ではバッテリーの損傷を防ぐために急速充電の最大速度が大幅に低下する。
ただ、新しいモデルのEVはほとんどが、バッテリーパックを理想に近い温度に保つ先端の温度管理システムを搭載しているとガーバーソン氏は解説する。
「気温が低ければ熱管理システムが作動してバッテリーを加熱する。つまり外の気温に関係なく、充電を始めるまでにはバッテリーが十分に温まっている」(ガーバーソン氏)