富裕層の流出続く英国、24年は9500人が移住か
(CNN) 投資可能な流動資産を少なくとも100万ドル(約1億5800万円)保有する最大9500人が英国を離れる見込みであることが分かった。英移住アドバイザーのヘンリー・アンド・パートナーズが18日に発表した報告書の試算で明らかになった。この人数は2023年の2倍以上に上る。
英政府研究所のハンナ・ホワイト最高経営責任者(CEO)は報告書の中で「これらの数字は、富裕層にとって英国が魅力的でなくなる要因が積み重なっていることを反映している」と述べ、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)の影響が尾を引き、ロンドンはもはや世界の金融の中心地とは見なされていないと指摘する。
1万6500人の富裕層が17年から23年の間に英国を離れた。これは、加速しているように見える富裕層の世界的な大量移住の一部にすぎない。同報告書によると、今年は12万8000人が移住するとみられ、昨年の記録を8000人上回っている。
富裕層が最も多く居住する15カ国・地域のうち、英国は特に苦しんでいる。24年に英国以上に富裕層が減少するのは中国のみ(1万5200人)。13年以降の10年間で純減を記録したのは英国以外では日本と香港のみだ。米国、カナダ、オーストラリア、ドイツ、フランスでは同時期に富裕層の人数は増えている。
ブレグジットの影響に加え、ウクライナ戦争とそれに伴うエネルギー価格の高騰といった経済的打撃は、前例のない政治的不確実性によって悪化している。
英国では10年以降、5人の首相が誕生。その中には22年にわずか45日で辞任したトラス前首相も含まれる。
新たなリスクも迫っている。世論調査でスナク首相率いる保守党を約20%リードしているスターマー党首率いる労働党は、企業や投資家の誘致に尽力しており、7月4日の選挙公約に経済の安定とより力強い成長の実現を掲げている。
労働党は所得税や消費税の引き上げは行わず、スナク政権が採用した財政ルールを堅持するとしている一方で、富裕層に打撃を与えかねない増税も約束している。
ホワイト氏は「経済的、政治的状況によってすでに生じている富裕層の流出が、選挙を前にした政策決定によって加速している」と指摘している。