「世界終末の疫病」でキリスト教が拡大? エジプト
(CNN) エジプトのルクソールにある墓地の遺跡から、3世紀半ばに大流行した疫病で死亡した人の人骨が発掘された。当時この疫病は世界の終末をもたらすと考えられ、結果的にキリスト教の布教を助ける要因になったという。
人骨は古代都市テーベの遺跡を発掘していたイタリアの考古学調査団が発見した。この当時、感染防止のための殺菌処理に使われていた石灰で厚く覆われており、付近からは遺体を火葬した跡や、石灰の生成に使った窯も見つかった。
この時代は「キプリアヌスの疫病」と呼ばれる感染症が大流行したことで知られる。北アフリカ沿岸の都市カルタゴで司教を務めたキプリアヌスの記述によれば、この疫病にかかると「絶え間ない嘔吐(おうと)に腸は震え、目には感染した血液の炎が燃え、場合によっては足あるいは手足の一部が腐って落ちる」とされ、多くは失明したり聴覚障害が残った。
ローマだけで1日に推定5000人がこの疫病のために死亡し、当時のローマ皇帝ホスティリアヌスとクラウディウス2世も犠牲になったほか、エジプトのアレクサンドリアでは人口の3分の2が死滅したと見る研究者もいる。
天然痘だったと思われるこの疫病の流行は、世界の終末を告げる予兆と考えられた。しかしキプリアヌスは、キリスト教徒は恐れを抱く必要はないと記述。人々の間には患者の姿や死者を火葬する光景に地獄のイメージが重なって世界終末への恐怖心が広がり、死後に地獄に落ちたくないとの思いから、キリスト教の信者が増えたとみられている。