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宇宙でエネルギーを集める太陽光パネル、将来は地球各地に電力供給か

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宇宙太陽光発電システムから軍事施設などにビームが照射される様子を描いたコンセプト図/U.S. Naval Research Laboratory

宇宙太陽光発電システムから軍事施設などにビームが照射される様子を描いたコンセプト図/U.S. Naval Research Laboratory

(CNN) 米国防総省の研究チームがこのほど、宇宙空間でピザの箱ほどの大きさの太陽光パネルの試験に成功した。宇宙から地球のあらゆる地点に電気を送る将来のシステムを見据え、試作機として設計されたものだ。

「太陽光発電高周波アンテナモジュール(PRAM)」と呼ばれるパネルが最初に打ち上げられたのは2020年5月。太陽光を活用して電力に変換するため、国防総省の無人機「X37B」に取り付けられた。X37Bは地球を90分で1周している。

試験中に熱真空チャンバー内に設置されたPRAMの関連設備=米首都ワシントンの米海軍調査研究所/Jonathan Steffen/U.S. Navy
試験中に熱真空チャンバー内に設置されたPRAMの関連設備=米首都ワシントンの米海軍調査研究所/Jonathan Steffen/U.S. Navy

このパネルは、宇宙空間にある太陽光を最大限に活用するように設計された。宇宙の光は大気を通過しないため「青色波」のエネルギーを保持しており、地球に届く太陽光よりも強力となる。地球の空が青く見えるのは、青色光が大気突入時に散乱するからだ。

プロジェクトの共同責任者、ポール・ジャフィー氏は「光が散乱しないため、宇宙では大量の太陽光を余分に得ることができる」と指摘する。

ジャフィー氏によると、最近の実験では、縦横12インチ(約30センチ)のパネルによって地球に伝送するエネルギーを約10ワット生み出せることが判明。大まかに言って、これはタブレットコンピューターの作動に十分な電力となる。

ただ、プロジェクトの構想では数十枚のパネルを並べる予定で、大型化に成功すれば、発電や地球の遠隔地への電力供給の方法に革命をもたらす可能性がある。

「一部では宇宙での太陽光発電について、現在最大規模の発電所が生み出す数ギガワットと同等かそれをしのぐ出力になるとの見方もある。これは一都市の電力をまかなうのに十分な規模だ」(ジャフィー氏)

今のところ実際に地球に直接送電するには至っていないものの、送電技術については既に実証済みだ。プロジェクトの進展の結果、幅数キロの巨大な太陽光アンテナを宇宙に展開する段階になれば、そこから地球のあらゆる場所に瞬時にマイクロ波を照射して、後で燃料を使わない電気に変換できる可能性がある。

ジャフィー氏は「他の電力源にはない太陽発電衛星の独自の利点は、このように世界各地に伝送できることだ」「シカゴに電力を送った数秒後、必要なら今度はロンドンやブラジリアに送ることもできる」と説明する。

PRAMに関する指示を出すクリス・デプーマ氏(左)=2019年10月10日、首都ワシントン/Jonathan Steffen/U.S. Navy
PRAMに関する指示を出すクリス・デプーマ氏(左)=2019年10月10日、首都ワシントン/Jonathan Steffen/U.S. Navy

ただ、ジャフィー氏によると、プロジェクトの鍵を握る経済的な実現可能性についてはいまだ証明されていない。「宇宙向けの機器の建設には費用がかさむ」「こうしたコストは、ここ10年でようやく低下し始めた段階だ」という。

X37Bのミッションは秘密のベールに包まれており、その目的について詳細が明らかになっているのはPRAMの実験などごく一部にとどまる。ジャフィー氏とPRAMの共同責任者クリス・デプーマ氏は1月、学術誌に実験の初期結果を発表。この結果についてジャフィー氏は、「実験がうまくいっている」証しだとしている。

自然災害時のソリューション

成否の鍵を握るのはPRAMの作動温度だ。ジャフィー氏によると、電子機器は温度が低いほど効率性が高まる一方、熱くなるにつれて発電能力が落ちる。X37は低軌道を周回するため、1周にかかる90分の約半分を暗闇の中、つまり低温環境の中で過ごす。

将来のPRAMは、1日1回地球を回る対地同期軌道に投入されるかもしれない。その場合、周回軌道は地球からはるか遠くに離れ、ほとんどの時間を太陽光の中で過ごすことになる。

今回の実験では、地球から3万6000キロを周回する場合の発電効率を証明するため、ヒーターを使ってPRAMを一定の高温に保つことを試みた。

この実験は成功。「論理上、次のステップはもっと広いエリアにPRAMを展開して、より多くの太陽光を集め、より多くのマイクロ波に変換することだ」(ジャフィー氏)という。

熱真空チャンバーでは実験室にいながらにして、宇宙のような環境でPRAMの試験を行うことができる=2019年10月9日/Jonathan Steffen/U.S. Navy
熱真空チャンバーでは実験室にいながらにして、宇宙のような環境でPRAMの試験を行うことができる=2019年10月9日/Jonathan Steffen/U.S. Navy

これにとどまらず、研究チームは地球にエネルギーを送る過程についても試験を実施する必要がある。宇宙空間のパネルは「レトロディレクティブ・ビーム制御」という技術を活用することで、マイクロ波の伝送先を正確に把握し、誤って違う目標に照射するのを避ける。この技術ではまず、地球上の受電アンテナから宇宙空間のパネルに向けてパイロット信号を送る。

マイクロ波が伝送されるのは、パイロット信号を受信し、地球上にある受電機の準備が整っていることが確認された場合のみ。受電機さえあれば、地球上のどの地点にもマイクロ波を送れる可能性があるとジャフィー氏は指摘する。

ジャフィー氏はまた、この技術が不正勢力によって巨大宇宙レーダーの開発に利用される可能性についても懸念を払拭(ふっしょく)した。エネルギーに指向性を持たせて破壊ビームをつくるには巨大なアンテナが必要なことから、組み立てにかかる数カ月から数年の間に気付かれるだろうと述べ、宇宙から太陽電力を兵器利用するのは「不可能ではないにしても非常に難しい」との見方を示した。

共同研究者のデプーマ氏は、仮に宇宙太陽発電技術が今すぐ実用化されれば、自然災害で通常のインフラが崩壊した際に即活用できると指摘する。

同氏の家族は寒波の影響で先ごろ大規模停電に見舞われたテキサス州に住んでいるといい、「このようなシステムがあれば、エネルギーをいくらかテキサスに振り向けることができる。私の祖母も自宅で暖房を使えるようになるだろう」と力を込めた。

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