南極のアザラシ、氷河融解についての研究をアシスト

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今回のプロジェクトではウェッデルアザラシとミナミゾウアザラシに追跡タグを取り付けている/Courtesy Lars Boehme

今回のプロジェクトではウェッデルアザラシとミナミゾウアザラシに追跡タグを取り付けている/Courtesy Lars Boehme

南極には6種のアザラシが住むが、海中深くまで潜るのはウェッデルアザラシとミナミゾウアザラシのみ。主にそれが理由で、これら2種がデータ収集のために選ばれたという。2種は海中ではシャチや他のアザラシの獲物になるが、地上には天敵がいないため、科学者は簡単に近づくことができる。「彼らは逃げたりしない」(ベーメ氏)

チームのメンバーは吹き矢でアザラシに鎮静剤を投与し、後頭部にスマートフォンほどの大きさのセンサーを接着。この過程でアザラシを傷つけたり社会生活に影響を与えたりすることはないと、ベーメ氏は指摘する。ただしアザラシの毛は毎年生え替わるため、1年後には装置は外れてしまう。

アザラシが海中を泳ぐ間、この装置はさまざまな場所の水深や水温、塩分濃度に関する情報を収集する。そしてアザラシが空気を求めて海面に浮上すると、人工衛星を通して「データプロファイル」が送信される。

2014年にプロジェクトが始まったとき、アムンゼン海付近について手に入るデータプロファイルは1000以下だった。アザラシの助けを借りた結果、今では南極大陸全域の数千カ所に2万を超えるデータポイントがある。

温かい水の中で

英イーストアングリア大学で環境科学の博士号取得を目指すイエシー・ゼン氏は、パインアイランド氷河の融解状況を調べるため、アザラシによって2014年にアムンゼン海で収集されたデータを活用している。

これまで、棚氷の下の水深450メートル付近で流出した「融解水」はそのまま、深海の薄暗い「トワイライトゾーン」にとどまるものと考えられていた。

しかし、今年3月に発表されたゼン氏の研究で、実際には一部の融解水が太陽光の届く海中の上層部に浮上していることが判明した。融解水は周囲の水に比べて3度近く温かく、塩分濃度が低いという特徴があり、海中でも簡単に追跡可能だという。

こうした温かい融解水は海中の下層から上層に移動することで、海面温度の上昇を引き起こし、海面の氷のさらなる融解を招く。さらに融解水は「ポリニヤ」と呼ばれる比較的温かいラグーンを形成する。

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