7000年前に死んだ10代女性のDNAから未知の現生人類の系統を発見 インドネシア
DNAを解析した結果、女性は5万年前にウォーレシアにやってきた最初の現生人類の子孫だと判明した。彼らはオーストラリアとニューギニアを合わせた氷河期の陸塊に最初に定住した人類の一部で、ブルム氏によれば現在のオーストラリアの先住民とパプア人の祖先に当たる。
女性にはまた、アジアに由来する別の系統の祖先がいることも分かった。ブルム氏によると、これまではアジア系の遺伝子を持つ人類が最初にウォーレシアに定住したのはおよそ3500年前と考えられていた。だが今回の発見で、当該の地域に現在まで全く知られていなかった現生人類のグループが存在した可能性が示唆されるという。
現在、この系統の子孫は生き残っていない。
出土した特徴的な石器/Yinika L. Perston
女性のDNAはさらに、今は絶滅し謎めいたデニソワ人の痕跡も含んでいる。これまでデニソワ人の化石は主にシベリアとチベットから出土している。
論文の共著者でドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の考古遺伝学教授、ヨハネス・クラウゼ氏は、スラウェシ島の女性からデニソワ人の遺伝子が見つかったことは「デニソワ人がこれまで考えられていたよりはるかに広い地域に広がっていたという我々の仮説を支持する」と語る。
ただ、ウォーレシア西部に住んでいた他の狩猟者のDNAを見ると、デニソワ人の痕跡はない。
「ウォーレシアでは現生人類とデニソワ人の地理的分布が重なっていたのかもしれない。もしかしたら、そこはデニソワ人とオーストラリア先住民やパプア人が交雑した重要な場所である可能性もある」と、共著者で独テュービンゲン大学のコジモ・ポスト教授は指摘する。
今回の発見は、研究者が東南アジアにおける古代の遺伝子的な歴史を理解しようとする中で、パズルをひもとく一つのピースになる。