膨大なCO2排出源、コンクリートを環境に優しくする取り組み
「まったく同じものでないと」
セラテック社のセメントは性能の面で、「業界の最高基準」となるポルトランドセメントと変わらないとドレイパー氏は言い、建設業界で受け入れられるにはその点が重要だと付け加えた。「この点が低炭素技術の大きな原動力になると思う」と同氏。「見た目も触感も同じでなくてはならない。まったく同じものでないと、実社会では使ってもらえない。非常にうれしいことに、我々はその点でかなり成功したと言えると思う」
同社は昨年、「人間と地球に貢献する建築を奨励する」国際的な賞、オベル賞を受賞した。受賞者についてオベル賞は、「建設業界が膨大なカーボンフットプリントを残していることを考えれば、セラテック社の製造工程は世界全体の二酸化排出量を大幅に削減し、将来の低炭素建設を支える可能性を秘めている」と評した。
ドレイパー氏は同社のセメントについて、現在は研究段階のため非常に高価だと認めつつも、規模が拡大すればコスト面でポルトランドセメントと張り合えるだろう指摘する。セラテック社は25年前半までに実際の建物でセメントの検証を行う計画で、27年までに大規模な実地試用に着手し、複数の事業にセメントを供給したい考えだという。
他にもいくつかのスタートアップ企業が、コンクリートに二酸化炭素を直接貯留する方法を模索している。カーボンキュア社では回収した二酸化炭素を混合中のコンクリートに注入し、セメントと化学反応させてより強度の高いコンクリートを製造している。二酸化炭素の隔離だけでなく、強度を高めることで、より少ないセメントでコンクリートを製造できるそうだ。同じくカナダのカービクリート社は、工業プラントで回収した二酸化炭素を鉄鋼製造で廃棄された鉄くずと結合させることで、セメントを100%代替できるという。