コウテイペンギンのヒナが全滅、南極の海氷消失で壊滅的影響
論文共著者で英南極地域観測所の海鳥生物研究者、ノーマン・ラトクリフ氏によると、海氷が割れる時期が早ければ、ヒナは海に落ちて溺死(できし)する。あるいは流氷に乗って流され、親鳥と離れ離れになって餓死することもある。
この地域のペンギンには「大量死滅」が起きているとラトクリフ氏は警鐘を鳴らす。過去に南極大陸で観測された壊滅的な繁殖の失敗は散発的で、発生率も低かったという。
南極の海氷の激減については、過去数年にわたり、専門家が警鐘を鳴らしていた。
南極大陸が夏の最盛期を迎えた今年2月、海氷はかつてない水準にまで減少した。例年であれば海氷が復活する真冬になっても、期待された水準には程遠い状態が続いた。7月中旬、南極の海氷は1945年に観測が始まって以来、この時期としては最も少なくなり、1981~2010年の平均を260万平方キロ下回った。これはアルゼンチンの国土に匹敵する面積だった。
ほかに行く場所のないコウテイペンギンにとって、これは特に壊滅的だとラトクリフ氏は言う。コウテイペンギンは繁殖に失敗すると、別の場所へ移ることでそれに順応する。しかし繁殖地全体が影響を受ければそれもできない。
今回の報告によると、南極のコウテイペンギンは18年~22年にかけ、研究者が把握している62のコロニーのうち30%が海氷の部分消失や完全消失の影響を受けていた。
南極の種に詳しいコロラド大学ボールダー校のカサンドラ・ブルックス助教(今回の調査にはかかわっていない)は、「地球温暖化に伴い、海氷の消失に直接起因するコウテイペンギン絶滅の可能性を裏付ける証拠はどんどん増えている」と述べ、「コウテイペンギンの存続を保証できる機会は狭まりつつある」と危機感を示した。
昨年発表された別の研究では、地球温暖化の原因となる化石燃料汚染を世界が抑制できなければ、コウテイペンギンを筆頭とする南極の在来種の65%が、今世紀末までに姿を消すだろうと予測していた。