小惑星ベンヌからの試料、地球の重要な構成要素含む NASA発表
(CNN) 米航空宇宙局(NASA)は11日、地球近傍小惑星「ベンヌ」で採取した試料の概要を明らかにした。試料は太陽系の形成初期の状況を伝えるタイムカプセルの役割を果たす可能性がある。
NASAのネルソン長官によると、試料の岩石や塵(ちり)には水と多量の炭素が含まれていることが分かった。これは小惑星が地球の生命の構成要素となる物質を運んできた可能性を示唆する。
またNASAの探査機「オシリス・レックス」のプロジェクトに携わったジェーソン・ドウォーキン博士は、試料の重量の5%近くを炭素が占めていると明らかにした。これまで地球に持ち帰った小惑星の試料の中で最大の炭素量だという。
ネルソン氏は「炭素と水の分子は、まさしく我々が見つけたいと望んでいた種類の物質だ。それらは地球を構成する上で極めて重要な要素であり、生命誕生に結びつく要素の起源の特定に寄与するだろう」と語った。
試料は45億年前に誕生したベンヌから2020年10月にオシリス・レックスにより採取された。カプセルに入った状態で先月24日、米ユタ州の砂漠に着地していた。
過去2週間、科学チームは電子顕微鏡や赤外線計測などを用いて試料を分析した。またX線を駆使して粒子の一つの3Dモデルを作成し、その組成を明らかにした。炭素と水が含まれていることはこの過程で分かったという。
「最初の分析で、試料には水が水和した粘土鉱物の形で豊富に含まれていることが明らかになった。さらに炭素も、鉱物と有機分子の両方の形で含まれていた」(ネルソン氏)
チームはそうした粒子の詳細な画像を共有した。
米アリゾナ大学の指導教授で、オシリス・レックスの主任研究員を務めるダンテ・ローレッタ氏は、これらの粘土鉱物が40億~45億年前に到達したことで地球が生命の住める世界になったと指摘する。
同氏によると分析では、惑星の進化にとって重要な硫化鉱物や磁場に反応する酸化鉄鉱物、生物進化で重要なその他の鉱物の存在も明らかになったという。
科学チームはあらゆる生物にとって不可欠な要素が試料から豊富に見つかったことに興奮を隠さない。NASAの上級科学者で当該試料の分析を担当するダニエル・グラビン氏は、適切な小惑星を選んだだけでなく、適切な試料を持ち帰ったと強調。宇宙生物学者にとって夢のような研究材料だと語った。
今後はベンヌの表面で化学構造がどこまで進化していたかを検証し、アミノ酸が複数結合したペプチドの形成が起きていたかどうか判断を下すとグラビン氏は説明した。生物体の成分の一つであるたんぱく質は、アミノ酸の結合によって構成されている。