「2億8000万年前の爬虫類の化石」、実は作り物だった
(CNN) 良好な保存状態で見つかった2億8000万年前の古代爬虫(はちゅう)類の化石とされる標本は、実は作り物だったとする調査結果がこのほど発表された。
問題の化石はイタリアのアルプスで1931年に発見されて「トリデンティノサウルス・アンティクウス」と命名され、イタリアのパドバ大学自然人類博物館が収蔵している。岩の上に残された黒っぽいトカゲのような痕跡は皮膚や組織と考えられ、初期の爬虫類の進化を探る手がかりになると考えられた。
この化石は長年にわたって文献にも引用されたが、これまで詳しい調査が行われたことはなかった。同じような標本がほかには見つかっていないことから、この生物の生態をめぐって多くの疑問が浮上していた。
そこで研究チームが詳しく調べた結果、化石の黒っぽい色は保全された遺伝物質ではなく、数本の骨と、刻んだ岩の上に塗られた単なる塗料だったことが分かった。この研究は、15日に古生物学の専門誌パレオントロジーに発表された。
論文を発表したアイルランド国立大学コーク校の研究者は電子メール取材に対し、「この化石標本の体の輪郭は、植物や動物の本物の化石の組織と同じ色をしていた」「従って診断技術を用いなければ、この黒っぽい色の物質を特定することは不可能だった」と説明している。
研究チームは2021年から紫外線撮影技術を使って調査を開始。生物学的情報を探るために顕微鏡を使って様々な波長で分析した結果、この標本は岩に刻んだ体の輪郭を「獣炭」で塗って作られていたことが分かった。獣炭は100年ほど前、動物の骨を燃やして作られていた市販の顔料だった。