南極氷床の下で進む融解、海面上昇は予想以上に加速か 英研究所
(CNN) 南極大陸で氷床の融解が進むなか、氷床の下に暖かい海水が少しずつ流れ込んでいる現象が新たに見つかり、海面が予想以上の速さで上昇する可能性が指摘されている。
英南極研究所(BAS)のチームが、25日発行の地球科学の専門誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に報告した。
チームによると、氷床が海へ押し出されて棚氷となる境界の「接地線」から、比較的暖かい海水が氷床の下に向かって入り込んでいる。これによって氷に空洞ができ、より多くの海水が流れ込み、さらに空洞が大きくなるというサイクルが続いている。
海水温がわずかに上がるだけでも、解ける氷の量は大きく影響されるという。
BASの研究者によると、このサイクルに歯止めがかからず、融解量が突然変化して後戻りできなくなる「転換点」に至る事態も想定される。
南極の氷山=2月8日/Sebnem Coskun/Anadolu/Getty Images
転換点を越えると大陸の氷が海へ流れ出す速度が急に上がる。海面上昇を予測する現行のモデルにはこの要因が含まれていないため、実際の上昇は大きく速まる可能性がある。
チームによれば、海面上昇への影響はすぐには実感できないが、10年、100年単位で世界の海岸線に脅威を及ぼすことが予想される。
研究チームは転換点の時期や、予想される海面の上昇幅を示していない。ただし、南極大陸の氷床ではすでに毎年平均1500億トンの氷が融解していて、すべて解ければ世界の海面は約58メートル上昇する計算だ。
南極大陸ではこれまで、「終末の氷河」とも呼ばれるスウェイツ氷河など、主に西部での融解が研究されてきた。だがチームによると、今回の研究では大陸東部にある氷河の一部も危機にさらされていることが明らかになったという。