「古代エジプトの森の王」、ほぼ完全な頭蓋骨の化石発見 絶滅の原因に迫れるか
動物相の入れ替わり
始新世と漸新世の境の時期は、約3400万年前に起きた地球規模の寒冷化現象により、大量の絶滅と大規模な動物相の入れ替わりが引き起こされた。ボース氏は、その後も生き残ったヒアエノドンは、いかに順応力と回復力を備えていたかを示したと指摘する。
それでも、数百万年後、ヒアエノドンは全滅し、犬やネコ、ハイエナの近縁種にとって代わられた。化石の記録の空白を埋めることで、かつては繁栄したヒアエノドンがなぜ絶滅したのか、そして、その系統の生き物がどの程度の適応力を持ち、環境からの圧力に耐えられるのかを理解できるようになる。
オーストリア・ウィーン大学古生物学研究所の博士研究員で講師のキャスリン・プファフ博士は、漸新世後期にヒアエノドンが絶滅したことについて、気候変動や競争の圧力、獲物を入手できる可能性の変化が肉食動物にどのような影響を与えたのかを示していると指摘する。プファフ氏は今回の研究に関与していない。
プファフ氏は、「進化の過程で犬や猫に負けたという事実はまだ謎のままだが、その原因は高度に特殊化した歯列にあるかもしれない」と述べ、ヒアエノドンの歯の並びや発達具合について言及した。そのため、今回のように完全な頭蓋骨が発見されたことは、たとえそれが中型の標本であっても謎の解明に一歩近づくことになるとの見方を示した。