「90歳、まだ続く」 孤独感をポッドキャスト番組に転換、語り合うシニアに反響

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

90歳超の高齢者ら、ポッドキャスト制作 孤独感を語り人気に

(CNN) 90歳を過ぎて生き続けることは、ある意味独特の孤独感を伴う。人生経験から分かち合えることはたくさんあるのに、友人や伴侶や大切な人に先立たれ、親しい人は減っていく。

そうした中、アルゼンチンでポッドキャストを通じて自分たちの境遇を分かち合う高齢者がいる。97歳のアルベルト・チャブさんは昨年、孫娘の助けを借りて、ブエノスアイレスの自宅から動画をネットに投稿。同年代に向けて、自分たちのことを語ろうと呼びかけた。

この呼びかけに1000人以上が応えた。チャブさんにとっても家族にとっても驚きだった。「小さな動画が津波を起こした。1500通の電子メール。高齢者は集まって互いに語り合うことを真に必要としていた。私がそこに触れ、中南米中から、カナダからも、私に便りが届いた」

チャブさんのアイデアに、26歳のジャーナリスト、グアダルーペ・カムラティさんも注目した。「これを見た瞬間から興奮して、強く心を打たれた」というカムラティさんは、チャブさんにポッドキャスト制作を提案した。

こうしてポッドキャスト番組「ノベンタ・イ・コンタンド(90歳、まだ続くの意味)」が誕生した。シニアたちは趣味のタンゴや健康習慣のことから愛情やつながり方に至るまで、何でも語り合う。番組の多くはインスタグラムでも公開されている。

チャブさんは番組のテーマについてアイデアを出し合うため、2週間ごとに仲間たちと集まるようになった。会議室に座るとこう語りかける。「思い浮かんだことは何でも言ってほしい。馬鹿馬鹿しいことなんて何もない。なにしろ車で事故を起こすとか、眼科に行くとか、自分の身に起きることは何であれ、ほかのみんなも同じような状況だから」

「ノベンタ・イ・コンタンドにようこそ」「私は家族や友人たち――まだ生きている人たちと一緒に自分が達成したことにとても満足しています」。ネリダさん(94)は番組の冒頭、そう語りかける。

別の番組で自転車に乗る姿を披露した女性は「私は85歳でついに夢をかなえました――旅行です」「年齢を考える必要はありません。必要なのはやろうという意思だけです」と語った。

番組は2024年にシーズン1が始まり、現在はシーズン2を制作中。男女それぞれ5人とチャブさんが交代でレギュラー出演している。

今はもう存在しないものや変わりゆく事柄がテーマになることもある。例えば子どものころに食べていたお菓子や、牛乳をスーパーで買わずに新鮮な生の状態で飲んでいたこと、マットレスは買い替えずに羊毛を詰めてもらっていたことなど。

ポッドキャストは関係者に好影響を与えたとチャブさんは感じている。出演者もリスナーも番組のおかげで大切な人や家族と分かち合えることが増えた。以前は年齢を理由に社会からも、自分の親類からも疎外されていると感じることが多かった。しかし今は語ることがあり、刺激を受けると感じることさえあるという。

いかに長く楽しい人生を送るかという論議は避けて通れない。マベルさん(92)は「90に到達する秘訣(ひけつ)は健康的な食生活をして、自分自身を愛すること」とアドバイスする。

チャブさんにとって、ポッドキャスターという新しいキャリアは「まだ学ぶことがたくさんある」と教えてくれた。技術的な側面は今もカムラティさんが担当しているが、自分もテクノロジーに挑戦し、AI(人工知能)も試してみたいとチャブさんは話している。

メールマガジン登録
見過ごしていた世界の動き一目でわかる

世界20億を超える人々にニュースを提供する米CNN。「CNN.co.jpメールマガジン」は、世界各地のCNN記者から届く記事を、日本語で毎日皆様にお届けします*。世界の最新情勢やトレンドを把握しておきたい人に有益なツールです。

*平日のみ、年末年始など一部期間除く。

「アルゼンチン」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]