五輪金メダリスト松本薫、「柔道は日本人の心」
試合中は本能の命じるままに動いていると松本選手は言う。雨が降ってくるとみんなが傘を差すように、状況に自然に反応しているだけなのだそうだ。
松本選手が柔道を始めたのは6歳のころ。礼に始まり礼に終わる柔道は「日本の伝統文化であるし、柔道は日本人の心そのものだと思う。日本人そのものを表しているのが柔道だと思う」と松本選手は語る。
柔道家なら誰もが目指すのが一本勝ちだ。「一本で完璧に勝てば、相手もこれだけきれいに投げられたのならと『負けた』と認めることができる」と松本選手は言う。それは自分と自分の弱さを認めることであり「美しいと思う」と彼女は語る。
松本選手自らが認める「弱点」の1つは食生活だ。最近では、相次ぐ故障を防止しようと有機野菜を努めて食べるなど、食生活の改善に取り組んでいるという。清涼飲料水やスナック菓子、チョコレートといったものに目がない松本選手だが、なるべく手をのばさないように努力しているという。
もっとも、故障が大切なものを教えてくれることもある。
2009年の世界選手権で指を骨折した時は、がむしゃらに攻めすぎて相手をきちんと見ていなかったことに気づかされた。松本選手は、かつての自分は闘志むき出しで冷静さに欠けていたと当時を振り返る。こうしてけがを通して学んだことが、翌年の優勝につながった。