世界的人気シェフ、アンソニー・ボーデインが見た東京
エキセントリックでクレイジー、そしてファンタジーな都市東京
日本や日本食、日本文化に魅了された多くの外国人同様、日本の持つセンセーショナルな世界観やポップカルチャー、フェティシズムな欲望に、私はいつも興奮し、ギョっとし、混乱する。漫画、おもちゃ、映画、広告やあらゆるエンターテイメントを覆い尽くすものの中には、ボンデージに身を包んだり、過剰な性的イメージで覆いつくされた女子学生、レイプ、同性愛、デーモンや触手による暴力的な描写や、さらにその先まである(総じて『ヘンタイ』と呼ばれる)。騒々しい新宿エリアは、エキセントリックなものから身の毛もよだつものまで、まさに銀河の先へと続く快楽が待っている。
これは一体どういうことなのか。単純に、日本人は、私たちよりクレイジーで風変わりなのか。旧約聖書に出てくる退廃的な都市ソドムとゴモラに几帳面さが加わったようなこの場所が、一体どうやって、変化に富んだ素晴らしく完璧な食文化を生み出しているのか。そして、それらすべての狂気の中で、おいしい思いをしているのは誰なのか。
日本人は、性に対してオープンで、中立で、比較的寛容な一面を持っているように思う。しかし一方で、仕事場や社会における女性の扱いは、まだまだ古くからの慣習を引きずっているようだ。厳格で伝統的な一面と、クレイジーでパーティー野郎な一面も持つ日本は、常に外界の人間を戸惑わせる。この地を訪れてもなお。
興味深いことに、最近の英紙ロンドン・オブザーバーの記事によると、日本の独身男性の61%と、独身女性の49%が、恋愛関係にある相手がいないのだという。そして、日本人女性の45%は、性行為に興味が無い、または避けると答えているのだという。
外界との接触を諦めアバターを通したバーチャル世界を生きる「ひきこもり」や、30代になっても両親との同居を続ける独身者の増加、またオタク文化の躍進などを見ても、若い世代はますます現実の恋愛関係から遠ざかり、独自のファンタジーな世界を生きているようだ。バーチャル・ガールフレンド、カスタムデザインのリアルな人形、寂しいときに抱きつく「抱き枕」など、そのすべてが、寂しさと欲望を満たす役割を担っている。