デザインに遊び心を 日本のデザイン事務所「nendo」
これは「nendo」という社名にも反映されている。「土」を意味するが、子どもがいじって遊ぶおもちゃの粘土の意味にも訳される。柔軟性や順応性は、nendoが掲げるデザイン観の鍵となっている。
柔軟な発想の例に挙げられるのが、チェコの職人と共同で製作したガラスのテーブルだ。ガラスを正方形の鋳型に流し込んでいるのを見た佐藤氏は、「ガラス自身に形を作らせたらどうだろう」と着想。鋳型の一部を除去し、液状のガラスが厳密な正方形からしみ出るようにすることで、ガラスに有機的で構造化されていない要素を与えた。
佐藤氏は2002年、早稲田大学で建築の修士号を取得。同年、nendoを設立した。nendoは現在、グラフィックや商品デザインなど、さまざまな分野を取り扱っている。
nendoの作品は、米ニューヨーク近代美術館(MoMA)やパリのポンピドューセンターなど、世界的に評価の高い美術館で展示されている。だが佐藤氏は、美術館向けの作品だけでなく、「チューイングガムの包装」も喜んでデザインすると話す。nendoは数百件のプロジェクトを同時並行で進めているといい、ガムの包装が作品に含まれている可能性も十分ある。