予算超過は当たり前、誰も望まない五輪招致 ローマも撤退
長期的なコストを考えるうえで一番分かりやすい例は、1976年夏季五輪の開催地となったモントリオール(カナダ)だろう。
当時の市長は五輪開催を前にこう宣言していた。「男性が出産することはあり得ないのと同じく、五輪で損失が出ることはあり得ない」――しかしそれは間違いだった。放漫財政と予算超過による負債は15億ドルに上り、返済がようやく完了したのは06年のことだった。
その頃までに、「ビッグオー(Big O)」の愛称で知られたメイン会場のスタジアムは野球場となり、やがて廃墟と化した。愛称の「O」は、いつしか「借金を負う」という意味の「オー(Owe)」に変わっていた。
モントリオールは極端なケースだとしても、招致費用が膨れ上がるのはいつものことだと、専門家らは指摘する。
英オックスフォード大学経営大学院の研究チームが13年に発表した論文によると、五輪が予算超過になる確率は100%。ほかの大規模プロジェクトは予算通りに収まるケースもあり、100%という数字は類を見ないという。