アメリカ杯、初優勝狙う英ランドローバー・BAR 躍進支える自動車技術
アンダートン氏のチームはこの1年、さまざまな条件下でウイングセールと空気の流れがどのように動くかをシミュレートする洗練されたコンピューター分析を使い、0.1ノット単位から「少しずつ少しずつ速度を積み上げ」てきた。
こうしたわずかな高速化の積み重ねを経て、最終的にはアメリカ杯の優勝トロフィーである「オールドマグ」を初めて英国に持ち帰る快挙が達成されるかもしれない。
アンダートン氏は「あらゆる条件下で相手チームの平均速度をごくわずかでも上回ることができれば、優位にレースを進められる」と指摘。さらに、AC50は方向転換の際に止まる必要なく全コースを滑走することができるだろうとも付け加えた。2013年大会に出場したチームの艇にはこうした機能が備わっていなかった。
「我々はウイングセールから最適な反応を引き出すことに集中している」「目下、我々のあらゆる取り組みはこの点に注がれている」(アンダートン氏)
英国チームは技術に大きな焦点を当てているが、バミューダ諸島での挑戦には非常に人間的な要素も関わっている。
スタッフは半数がバミューダ諸島に移る見通しで、コミュニケーションが今よりさらに重要になりそうだ(この移動には機器を運ぶコンテナ42台、クレーン1基、艇2隻が含まれるほか、赤ちゃん6人など子ども30人を含む家族ら54人を新住居に住まわせることも必要になる)。
ポーツマスにあるランドローバー・BARの本部は引き続き、「司令部」としての役割を果たす見通し。そこで活用されるのはF1でも使われている通信システムで、バミューダ諸島のグレート・サウンドで試験艇2隻が滑走する様子を技術者や性能アナリストがリアルタイムで追跡することを可能にする。試験艇はセンサー190個以上とカメラ4台を通じ、本部にデータを送り返す仕組みだ。