中国の映画館で往年のプロパガンダ作品上映、ハリウッド映画は締め出されるのか
香港(CNN Business) 中国政府は先ごろ、国内の映画館に対し中国共産党の創設を祝福する内容の映画を上映するよう命令を下した。結果的に人気の高いハリウッド映画が上映機会を奪われかねない事態となり、国内の映画ファンからは不満の声が上がった。
今年3月に公表された宣伝素材によると、中国国内の映画館ではハリウッドの人気映画「ロード・オブ・ザ・リング」の三部作が4月9日、16日、23日にそれぞれ1作ずつ公開される予定だった。第1作の公開から20周年を記念してのリマスター版の特集上映だ。
ところが4月1日以降、国内の映画館の上映スケジュールから同作が突如(とつじょ)姿を消し、主要なチケットサイトも告知なく宣伝を取りやめた。米ワーナーブラザースは数週間にわたり同作の中国上映を宣伝してきたが、なぜ作品に関する案内が行われなくなったのかとの問いには回答しなかった。
代わって上映スケジュールを席巻するようになったのは、数十年前に作られたプロパガンダ映画だ。中国共産党をたたえる内容のこうした作品は規制当局からの受けがいい。
党公認の映画を宣伝するようにとの今回の命令は国家電影局が発したものだが、公式声明の中では上映スケジュールからハリウッド映画を削除することは求めていない。CNN Businessは同局にコメントを求めたが回答はなかった。
それでも業界のアナリストや映画ファンはすぐさま当局を非難。作品の差し替えが当局による措置なのは明らかだと指摘している。
ソーシャルメディアには「純粋に娯楽映画を楽しみたいだけ」「米中関係に巻き込まないで。頼む」「愛国心を失ったりはしない」「いい映画を見たいだけ」といった書き込みが相次いだ。
電影局は3月下旬に出した命令で国内すべての映画館に対し、共産党を宣伝する映画を週に少なくとも2本上映するよう要求。2021年いっぱいそうしたスケジュールを続けることを義務付けた。党創設100周年を祝福するのが目的だとしている。